資料106 国民学校国語教科書『ヨミカタ 二』(本文)



     『ヨミカタ 二』

      モクロク
     一  山ノ 上
     二  アシタハ ウンドウクヮイ
     三  ウサギト カメ
     四  ラジオノ コトバ
     五  西ハ 夕ヤケ
     六  カマキリヂイサン
     七  サルト カニ
     八  オチバ
     九  イモヤキ
     十  コモリウタ
    十一  オイシャサマ
    十二  デンシャゴッコ
    十三  ケンチャン
    十四  冬
    十五  お正月
    十六  兵タイゴッコ
    十七  ネズミノ ヨメイリ
    十八  シャシン
    十九  カゲヱ
    二十  日本の しるし
   二十一  花サカヂヂイ
   二十二  ユメ
   二十三  机と こしかけ
   二十四  ウグヒス
   二十五  つくし
   二十六  汽車

   

 

 

  一 山ノ上

ムカフノ 山ニ
ノボッタラ、
山ノ ムカフハ
村 ダッタ、
タンボノ ツヅク
村 ダッタ。

ツヅク タンボノ
ソノ サキハ、
ヒロイ、ヒロイ
海 ダッタ、
悒ぁ悒
海 ダッタ。

小サイ シラホガ
二ツ、三ツ、
悒 海ニ
ウイテ ヰタ、
トホクノ 方ニ
ウイテ ヰタ。

 

 

 

    二 アシタハ ウンドウクヮイ

ヒルスギカラ、空ガ クモッテ 來マシタ。
アシタハ ウンドウクヮイ デス。勇サンハ、天キガ シンパイデ タマリマセン。外ヘ 出テ、空バカリ 見テ ヰマス。
勇サンハ、カミデ テルテルバウズヲ ツクリマシタ。ソレヲ ニハノ 木ノ 枝ニ ツルシテ、
  テルテルバウズ、
   テルバウズ、
  アシタ 天キニ
   シテ オクレ。
ト ウタヒマシタ。
ケレドモ、空ハ、ダンダン クラク ナッテ 來マシタ。トウトウ 雨ガ フリダシマシタ。テルテルバウズハ、ビショヌレニ ナッテ、ナイテ ヰマス。
少シ タッテカラ、勇サンハ、オカアサンニ イヒツカッテ、ハガキヲ 出シニ イキマシタ。
勇サンハ、「雨ガ フッテ ツマラナイナア。」ト イヒナガラ、カサヲ サシテ 出カケマシタ。
少シ イクト、トケイヤノ 店カラ、ラジオガ キコエテ 來マシタ。
「コンヤハ 雨デスガ、アスハ ヨイ 天キニ ナリマス。」
勇サンハ、ウレシクテ タマリマセン デシタ。大イソギデ ハガキヲ 出シテ、ウチヘ カヘリマシタ。
「オカアサン、アシタハ オ天キ デス。ラジオガ サウ イヒマシタヨ。」
ト イヒマスト、オカアサンハ、
「マア、ヨカッタネ。デハ、オイシイ オベンタウヲ コシラヘテ アゲマ
  スヨ。」
ト オッシャイマシタ。


   三 ウサギト カメ

ウサギ「カメサン、コンニチハ。」
カ メ「ウサギサン、コンニチハ。」
ウサギ「ナニカ、オモシロイ コトハ ナイカナ。」
カ メ「サウ ダネ。」
ウサギ「カケッコヲ シヨウカ。」
カ メ「ソレハ オモシロイ。」
ウサギ「デモ、ボクノ カチニ キマッテ ヰルナ。」
カ メ「ソンナ コトハ ナイヨ。」
ウサギ「デハ、ヤラウ。ケッショウテンハ、アノ 山ノ 上 ダヨ。」
カ メ「山ノ 上。イイトモ。」

ウサギ「オソイ カメサン ダナ。アンナニ オクレテ シマッタ。コノヘ
       ンデ、ヒルネヲ シヨウ。
       グウ グウ グウ。」
カ メ「オヤ オヤ、ウサギサン、
    ヒルネヲ シテ ヰルゾ。
    イマノウチニ オヒコサウ。急ゲ、急ゲ。」
ウサギ「アア、イイキモチ ダッタ。マダ、カメサンハ ココマデ 來ナイ        ダラウ。ドレ、出カケヨウカナ。オヤ、山ノ 上ニ ダレカ ヰル
       ゾ。」
カ メ「バンザイ。」
ウサギ「ヤア、カメサン ダ。シマッタ、シマッタ。」
 
 

 

 

    ラジオノ コトバ

 日本ノ ラジオハ、
 日本ノ コトバヲ ハナシマス。
 正シイ コトバガ、
 キレイナ コトバガ、
 日本中ニ キコエマス。

 マンシウニモ トドキマス。
 シナニモ トドキマス。
 セカイ中ニ ヒビキマス。

 

 

 

    五 西ハ 夕ヤケ

勇サンハ、マンシウノ ヲヂサンカラ、本ヲ オクッテ イタダキマシタ。マンシウノ 子ドモタチノ ヨム 本 デシタ。
一バン ハジメニ、マンシウノ 空ノ ウツクシイ コトガ、カイテ アリマシタ。ソレカラ、ヒロイ、ヒロイ ノハラニ、カウリャント イッテ、日本ノ キビニ ニタ モノガ デキル コトガ、カイテ アリマシタ。
ヨンデ イク ウチニ、ツギノヤウナ ウタガ アリマシタ。
  西ハ 夕ヤケ 赤イ クモ、
  東ハ マルイ オ月サマ。
  カウリャン カッテ ヒロイナア、
  ドッチヲ 見テモ ヒロイナア。
ヒロビロト シタ マンシウヘ、勇サンハ イッテ 見タク ナリマシタ。
勇サンハ 外ヘ 出テ、ムネヲ ハリナガラ、イキヲ イッパイ スヒコミマシタ。サウシテ、大キナ コヱデ ウタヒマシタ。
  西ハ 夕ヤケ 赤イ クモ、
  東ハ マルイ オ月サマ。
  カウリャン カッテ ヒロイナア、
  ドッチヲ 見テモ ヒロイナア。

 

 

 

   六 カマキリヂイサン

 カマキリヂイサン
  イネカリニ、
 カマヲ カツイデ
 アゼミチヲ、
 トホイ タンボヘ
 急ギマス。
 キレイニ ハレタ
 秋ノ 日ニ、
 トホイ タンボヘ
 急ギマス。 
 
 

 

 

   七 サルト カニ

サルガ、柿ノ タネヲ ヒロヒマシタ。
カニガ、ニギリメシヲ ヒロヒマシタ。
サルハ、カニ ニ イッテ、柿ノ タネトトリカヘッコヲ シマシタ。
サルハ、ニギリメシヲ オイシサウニ タベマシタ。
カニハ、柿ノ タネヲ ニハニ マキマシタ。
「早ク メ ヲ 出セ、
 柿ノ タネ。
 早ク メ ヲ 出セ、
 柿ノ タネ。」
メ ガ 出マシタ。
「早ク 木ニナレ、
 柿ノ タネ。
 早ク 木ニナレ、
 柿ノ タネ。」
木ニ ナリマシタ。
「早ク ミ ガ ナレ、柿ノ タネ。
 早ク ミ ガ ナレ、柿ノ タネ。」
大キナ 柿ガ、タクサン ナリマシタ。
サルガ、アソビニ 來マシタ。
「ボクガ トッテ アゲヨウ。」
ト イッテ、木ニ ノボリマシタ。長イ 手ヲ ノバシテ、柿ヲ イクツモ イクツモ トリマシタ。

サルハ ジブンバカリ タベマシタ。シマヒニ、悒 柿ヲ カニ ニ ナゲツケテ、イッテ シマヒマシタ。
カニハ 大ケガヲ シマシタ。
ソコヘ、ハチガ 來マシタ。
ウスガ 來マシタ。
栗ガ 來マシタ。
ミンナデ、サルヲ コラス コトニ シマシタ。
サルヲ ヨビニ ヤリマシタ。
サルガ、カニノ ウチヘ 來テ、ヒバチノ 前ニ スワリマシタ。
灰ノ 中ニ カクレテ ヰタ 栗ガ、サルニ ポント トビツキマシタ。サルハ、「アツイ、アツイ。」ト イッテ、水ヲ カケニ イキマシタ。
水ガメノ 中ニ カクレテ ヰタ ハチガ、サルノ カホヲ チクリト サシマシタ。サルハ、「イタイ、イタイ。」ト ナイテ、戸グチノ 方ヘ ニゲマシタ。ウスガ、上カラ ドシント オチテ 來マシタ。
ソコヘ、カニガ 來マシタ。栗モ 來マシタ。ハチモ 來マシタ。
サルハ、ジブンガ ワルカッタト アヤマリマシタ。

  


 

   八 オチバ

キヌ子サント 花子サンガ、オチバヲ ヒロヒニ、林ノ 中ヘ 行キマシタ。
キイロナ ハ ヤ、マッカナ ハ ガ、タクサン オチテ ヰマス。
アルクト、カサカサ 音ガ シマス。
キヌ子サンガ、キイロナ ハ ヲ 一マイ ヒロッテ、日ニ スカシナガラ、
「ハノスヂガ、キレイニ 見エマスヨ。」
ト イヒマシタ。
花子サンガ、モミヂノ ハ ヲ ヒロッテ、
「コレヲ オシバニ シマセウ。」
ト イヒマシタ。
小トリガ、チチ チチト ナイテ ヰマス。

 

 

 

   九 イモヤキ

「ケフハ、ハタケノ カタヅケヲ シヨウ。」
ト、オトウサンガ オッシャイマシタノデ、オカアサンモ、ボクモ、弟モ、ハタケニ 出マシタ。
ミンナデ、アチラ コチラニ オチテ ヰル 木ノ 枝ヤ、カレ草ナドヲ、ヒトトコロニ アツメマシタ。ソレニ、オトウサンガ 火ヲ オツケニ ナリマシタ。ケレドモ、スグ 消エマシタ。
オカアサンガ、カンナクヅヲ モッテ オイデニ ナリマシタ。コンドハ ヨク モエマシタ。ミンナデ、カレ枝ヤ オチバヲ カブセルト、パチパチト モエアガリマシタ。
弟ハ、
「エンマク ダ、エンマク ダ。」
ト イッテ、ヨロコビマシタ。
オカアサンガ、大キナ オイモヲ 二ツ モッテ 來テ、灰ノ 中ヘ オ入レニ ナリマシタ。
「早ク ヤケナイカナ。」
ト、弟ガ イヒマシタ。ボクハ、
「ソンナニ 早クハ ヤケナイヨ。」
ト イッテ、弟ト、トナリノ ウサギノ 子ヲ 見ニ 行キマシタ。ウサギノ 子ハ、五ヒキ ヰテ、ヒトカタマリニ ナッテ ヰマシタ。
オイモノ コトヲ オモイ出シテ、マタ ハタケヘ 行キマシタ。オイモノ ニホヒガ、オイシサウニ シテ ヰマシタ。
オトウサンガ、
「ドレ、ドレ。」
ト、灰ノ 中ヲ サガシテ、
「ヤケタ、ヤケタ。」
ト オッシャイマシタ。
ワタクシタチハ オイシク タベマシタ。

 

 

 

    十 コモリウタ

 ネンネン コロリヨ、
  オコロリヨ。
 バウヤハ ヨイ 子 ダ、
  ネンネシナ。

 バウヤノ オモリハ、
  ドコヘ 行ッタ、
 アノ 山 コエテ、
  里ヘ 行ッタ。

 里ノ ミヤゲニ、
  ナニ モラッタ。
 デンデンダイコニ、
  シャウノ フエ。

 

 

 

   十一 オイシャサマ

花子サンハ、人ギャウガ 病氣ニ ナッタノデ、オイシャサマヲ ヨビマシタ。
オイシャサマハ 正男サン デス。オトナノ バウシヲ カブッテ、大キナ カバンヲ モッテ、ハイッテ 來マシタ。
「ゴ病人ハ ドチラ デスカ。」
「アチラニ ネテ ヲリマス。」
花子サンハ、正男サンヲ オクヘ トホシマシタ。
正男サンハ、人ギャウノ ソバニ スワリマシタ。
正男サンハ、人ギャウノ 手ヲ トリマシタ。ヒタヒニ サハッテ ミマシタ。オナカヲ オサヘテ ミマシタ。
正男サンガ、アンマリ ジャウズニ、オイシャサマノ マネヲ スルノデ、花子サンハ、急ニ ヲカシク ナリマシタ。デモ、笑ハナイデ、ジット ガマンシテ ヰマシタ。
正男サンハ、テイネイニ ミテカラ、
「タイシテ ワルクハ ナイヤウデス。タベスギ デスネ。」 
ト、マジメナ カホヲ シテ イヒマシタ。
花子サンハ、トウトウ 笑ヒダシマシタ。正男サンモ 笑ヒダシマシタ。


 

 

 

    十二 デンシャゴッコ

 ウンテンシュハ キミ ダ。
 シャシャウハ ボク ダ。
 アトノ 四人ガ、
 デンシャノ オ客。
 「オノリハ オ早ク、
  ウゴキマス、チンチン。」

 ウンテンシュハ ジャウズ。
 デンシャハ 早イ。
 ツギハ ボクラノ
 學校前ダ。
 「オオリハ オ早ク、
  ウゴキマス、チンチン。」

 

 

 

   十三 ケンチャン

オカアサンガ、キモノヲ ヌッテ イラッシャイマシタ。ケンチャンガ ソバヘ 行ッテ、ハリバコニ サハッタリ、キレヲ ヒッパッタリシマシタ。
オカアサンガ、
「キヌ子サン、チョット ケンチャンヲ ツレテ、ワンワンヲ 見ニ 行ッテ チョウダイ。」
ト オッシャイマシタ。
私ハ、ケンチャンヲ ツレテ、外ヘ 出マシタ。
私ハ、オトナリノ 前ヘ 行ッテ、
「シロ、シロ。」
ト 呼ビマシタガ、シロハ ヰマセン デシタ。
ツトムサンノ ウチノ 前ニ、馬ガ ヰマシタ。
ケンチャンガ、
「オンマ、オンマ。」
ト イヒマシタ。
馬ハ、ヲケノ 中ヘ カホヲ 入レテ、カヒバヲ タベテ ヰマシタ。
タベナガラ、トキドキ シッポヲ フッテ ヰマシタ。
ケンチャンハ、ニコニコシテ 見テ ヰマシタ。

 

 

 

      十四 冬

    一
ケサ、ハジメテ 池ノ 水ガ コホリマシタ。妹ガ、
「キンギョヤ コヒハ、ドウシテ ヰル デセウネ。」
ト シンパイサウニ イヒマシタ。私ガ、
「ドコカニ カクレテ ヰルノ ダラウ。」
ト イヒマスト、妹ハ、
「氷ガ ハッテ、サカナタチハ サムイ デセウネ。」
ト イヒマシタ。

        ニ
   雪ヤ コンコ、
  アラレヤ コンコ、
    竹ノ ハ ニ ツモレ、
    松ノ 木 ニ ツモレ、
    ドンドン ツモレ。
妹ハ ウタヒナガラ、前カケヲ ヒロゲテ、フッテ 來ル 雪ヲ ウケテ ヰマス。
雪ハ、アトカラ アトカラ フッテ 來マス。
ナカヨク ナランデ、フッテ 來ルノモ アリマス。オッカケッコヲ シナガラ、フッテ 來ルノモ アリマス。トンボガヘリヲ シナガラ、フッテ 來ルノモ アリマス。

       三
ニイサント 二人デ、雪ダルマヲ ツクリマシタ。
ハジメニ、雪ノ タマヲ コシラヘテ、ソレヲ 二人デ コロガシマシタ。スルト、ダンダン 大キク ナッテ、コロガス コトガ デキナク ナリマシタ。コンドハ、少シ 小サイノヲ コシラヘテ、大キイノニ カサネマシタ。ソレカラ、炭デ 目ト 口ヲ ツケマシタ。
ヨルニ ナッテ、私ハ ニイサンニ、
「雪ダルマヲ 見テ 來マセウ。」
ト イッテ、二人デ 外ヘ 出マシタ。
月ガ 光ッテ ヰマシタ。雪ダルマハ、ドッカリ スワッテ ヰマシタ。

 

 

 

   十五 お正月

 お正月 來い、山から 來い。
  山の うらじろ 持って 來い。

  お正月 來い、里から 來い。
 おもち つきつき とんで 來い。

  お正月 來い、海から 來い。
  たからの お舟に のって 來い。

 

 

 

    十六 兵タイゴッコ

勇サンハ、オモチャノ テッパウヲ 持ッテ、
「ボクハ ホ兵 ダヨ。」
ト イヒマシタ。
正男サンハ、竹馬ニ ノッテ、
「ボクハ キ兵 ダヨ。」
ト イヒマシタ。
太郎サンハ、竹ノ ツツヲ 持ッテ、
「ボクハ ハウ兵 ダヨ。」
ト イヒマシタ。
太郎サンノ 弟ノ 次郎サンハ、小サイ シャベルヲ 持ッテ、
「ボクハ 工兵 ダヨ。」
ト イヒマシタ。
勇サンノ 弟ノ 正次サンハ、三リンシャニ ノッテ、
「ボクハ センシャ兵 ダヨ。」
ト イヒマシタ。
ユリ子サンノ 弟ノ 秋男サンハ、ヲリガミノ グライダーヲ 持ッテ、
「ボクハ カウクウ兵 ダヨ。」
ト イヒマシタ。
花子サンノ 弟ノ 一郎サンハ、オモチャノ ジドウシャヲ 持ッテ、
「ボクハ シチョウ兵 ダヨ。」
ト イヒマシタ。
花子サント ユリ子サンハ、
「私タチハ カンゴフニ ナリマセウ。」
ト イヒマシタ。

  カタカタ カタカタ、
  パンポン パンポン、
    兵タイゴッコ。

  カタカタ カタカタ、
  パンポン パンポン、
    ボクラハツヨイ。

  カタカタ カタカタ、
  パンポン パンポン、
    ススメヨ ススメ。

 

 

 

   十七 ネズミノヨメイリ

ネズミノ 赤チャンガ 生マレマシタ。ダンダン 大キク ナッテ、ヨイ ムスメニ ナリマシタ。オトウサンモ オカアサンモ、大ヨロコビデ、
「ホンタウニ ヨイ 子 ダ。コンナ ヨイ 子 ヲ、ネズミノ オヨメサンニ スルノハ ヲシイ。セカイ中デ 一バン エライ カタノ オヨメサンニ シタイ。」ト 思ヒマシタ。
オトウサント オカアサンハ、サウダンシテ、オ日サマノ トコロヘ オヨメニ アゲル コトニ シマシタ。ネズミノ オトウサンハ、オ日サマノ トコロヘ 行ッテ、
「私ノ ウチニ、タイヘン ヨイ ムスメガ アリマス。セカイ中デ、一バン  エライ カタノ トコロヘ、アゲタイト 思ヒマス。一バン エライ カタハ アナタデス。ドウカ、私ノ ムスメヲ モラッテ クダサイ。」
ト タノミマシタ。
オ日サマハ、
「アリガタイガ、オコトワリシマセウ。セカイ中ニハ、私ヨリ モット エライ 人ガ ヰマスカラ。」
ト オッシャイマシタ。
ネズミノ オトウサンハ、ビックリシテ、
「ソレハ ダレ デスカ。」
ト タヅネマシタ。
オ日サマハ、
「ソレハ 雲サン デス。イクラ 私ガ テッテ ヰテモ、雲サンガ 來ルト、カクサレテ シマヒマス。雲サンニハ カナヒマセン。」
ト オッシャイマシタ。
ネズミノ オトウサンハ、雲ノ トコロヘ 行ッテ、
「セカイ中デ、一バン エライ アナタニ、ムスメヲ アゲタイト 思ヒマス。」
ト イヒマシタ。
雲モ コトワリマシタ。
「セカイ中ニハ、私ヨリ モット エライ 人ガ ヰマスカラ。」
ト イヒマシタ。
ネズミノ オトウサンハ、ビックリシテ、
「ソレハ ダレ デスカ。」
ト タヅネマシタ。
雲ハ、
「ソレハ 風サン デス。イクラ 私ガ 空デ イバッテ ヰテモ、風サンガ 來ルト、吹キトバサレテ シマヒマス。風サンニハ カナヒマセン。」
ト イヒマシタ。
ネズミノ オトウサンハ、風ノ トコロヘ 行ッテ、
「セカイ中デ、一バン エライ アナタニ、ムスメヲ アゲタイト 思ヒマス。」
ト イヒマシタ。
風モ コトワリマシタ。
「セカイ中ニハ、私ヨリ モット エライ 人ガ ヰマスカラ。」
ト イヒマシタ。
ネズミノ オトウサンハ、
「ソレハ ダレ デスカ。」
ト タヅネマシタ。
風ハ、
「ソレハ カベサン デス。イクラ 私ガ チカライッパイ 吹イテモ、カベサンハ ヘイキデ ヰマス。カベサンニハ カナヒマセン。」
ト イヒマシタ。
ネズミノ オトウサンハ、カベノ トコロヘ 行ッテ、
「セカイ中デ、一バン エライ アナタニ、ムスメヲ アゲタイト 思ヒマス。」
ト イヒマシタ。
カベモ コトワリマシタ。
「セカイ中ニハ、私ヨリ モット エライ 人ガ ヰマスカラ。」
ト イヒマシタ。
ネズミノ オトウサンハ、
「ソレハ ダレ デスカ。」
ト タヅネマシタ。
カベハ、
「ソレハ ネズミサン デス。ネズミサンニ ガリガリト カジラレテハ、タマリマセン。」
ト イヒマシタ。
ネズミノ オトウサンハ、「ナルホド、セカイ中デ、一バン エライノハ、ネズミダ。」ト 思ヒマシタ。
ネズミノ オトウサンハ、ムスメヲ、キンジョノ ネズミノ オヨメサンニ シマシタ。

 

 

 

    十八 シャシン

センチノ ニイサン、オゲンキデスカ。
ケフ、ミンナデ シャシンヲ ウツシマシタ。デキタラ、スグ 送リマス。
マン中ニ、オヂイサント オバアサンガ オカケニ ナリ、ソノ ワキニ、オトウサント オカアサンガ オカケニ ナリ、ウシロニ、ネエサント 私ガ 立チマシタ。私ハ、セイガ ヒククテ カホガ 出ナイノデ、ハコノ 上ニ 立チマシタ。
「コノ シャシンヲ ニイサンガ 見タラ、ドンナニ ヨロコブ コト デセウ。」
ト、オバアサンガ オッシャイマシタ。
オトウサンガ、
「シャシンニ、コヱモ ウツルト イイガナ。」
ト オッシャルト、オヂイサンガ、
「手ガミヲ ヤレバ イイサ。ゲンキデ、オクニノ タメニ シッカリ ハタラケト、カイテ ヤラウ。」
ト オッシャイマシタ。
私ハ、マイアサ、ニイサンノ シャシンニ、「オ早ウ。」ヲ イヒマス。

 

 

 

      十九 カゲヱ

「ヲヂサン、コンヤモ マタ、カゲヱヲ シテ 見セテ クダサイ。」
「ヨロシイ。デハ、ヤリマスヨ。
  サア、犬デス。
    ワンワン。
  コンドハ キツネ。
    コン コン。
  コレハ トビ。
  クチバシヲ ゴラン。」
「早ク センドウサンヲ 見セテ クダサイ。」
「ハイ、コレハ センドウサン。
  長イ 竹ノ サヲデ、舟ヲ コギマス。」
「コンドハ、私ガ ヤッテ ミマセウ。」
「ホウ、ナニヲ ヤルカナ。」
「ヲヂサン、コレハ ナン デスカ。」
「サア、ナン ダラウ。手ノ 上ニ ゴムマリヲ ノセテ ヰルネ。」
「サウ デス。」
「フウセンカナ。」
「イイエ、チガヒマス。」
「デハ、チキウ ダラウ。」
「イイエ、コレハ オ月サマガ 雲カラ 出テ 來ル トコロ デス。」

 

 

 

    二十 日本のしるし

 日本の しるしに
 はたが ある。
  朝日を うつした
  日の丸の はた。

 日本の しるしに
 山が ある。
  すがたの りっぱな
  ふじの 山。

 日本の しるしに
 うたが ある。
  ありがたい うた、
  君が代の うた。

 

 

 

    二十一 花サカヂヂイ

 ムカシ ムカシ、アルトコロニ、オヂイサンガ アリマシタ。犬ヲ 一ピキ カッテ、タイソウ カハイガッテ ヰマシタ。
 アル日、犬ガ 畠ノ スミデ、
「ココ ホレ、ワン ワン、
 ココ ホレ、ワン ワン。」
ト ナキマシタ。
  オヂイサンガ、ソコヲ ホッテ ミマスト、土ノ 中カラ、オカネヤ タカラモノガ、タクサン 出マシタ。
  トナリノ オヂイサンハ、ヨクノ フカイ 人 デシタ。コノ 話ヲ キイテ、犬ヲ カリニ 來マシタ。ムリニ 犬ヲ ナカセテ、畠ヲ ホッテ ミマスト、キタナイ モノ バカリ 出マシタ。オヂイサンハ、オコッテ、犬ヲ コロシテ シマヒマシタ。
  犬ヲ カハイガッテ ヰタ オヂイサンハ、タイソウ カナシミマシタ。犬ノ オハカヲ ツクッテ、ソコヘ、小サナ 松ヲ 一本 ウヱマシタ。
  松ハ、ズンズン 大キク ナリマシタ。オヂイサンハ、ソノ 松ノ 木デ、ウスヲ コシラヘマシタ。ソレデ 米ヲ ツクト、オカネヤ タカラモノガ、タクサン 出マシタ。
  トナリノ オヂイサンハ、マタ ソノ ウスヲ カリニ 來マシタ。米ヲ ツイテ ミマスト、キタナイ モノ バカリ 出マシタ。マタ オコッテ、ウスヲ コハシテ、火ニ クベテ シマヒマシタ。
  犬ヲ カハイガッテ ヰタ オヂイサンハ、ソノ 灰ヲ モラッテ 來マシタ。スルト、風ガ 吹イテ 來テ、灰ヲ トバシマシタ。ソレガ、カレ木ノ 枝ニ カカッタカト 思フト、一ドニ パット 花ガ 咲キマシタ。
  オヂイサンハ、ヨロコビマシタ。灰ヲ ザルニ 入レテ、
「花サカヂヂイ、花サカヂヂイ。カレ木ニ 花ヲ 咲カセマセウ。」
ト イッテ、アルキマシタ。
  トノサマガ オ通リニ ナッテ、
「コレハ オモシロイ。花ヲ 咲カセテ ゴラン。」
ト オッシャイマシタ。
  オヂイサンハ、木ニ ノボッテ、灰ヲ マキマシタ。スルト、カレ木ニ 花ガ 咲イテ、一ドニ 花ザカリニ ナリマシタ。
  トノサマハ、
「コレハ フシギ ダ。キレイ ダ、キレイ ダ。」
ト オホメニ ナッテ、ゴハウビヲ タクサンク ダサイマシタ。
  トナリノ オヂイサンハ、ノコッテ ヰタ 灰ヲ カキアツメテ、カレ木ニ ノボッテ、トノサマノ オカヘリヲ マッテ ヰマシタ。ソコヘ、トノサマガ オ通リニ ナッテ、
「モウ 一ド、花ヲ 咲カセテ ゴラン。」
ト オッシャイマシタ。
  オヂイサンハ、灰ヲ ツカンデ マキマシタ。イクラ マイテモ、花ハ 咲キマセン。シマヒニ、灰ガ、トノサマノ 目ヤ 口ニ ハイリマシタ。
  トノサマハ、
「コレハ ニセモノ ダ。ワルイ ヤツ ダ。」
ト オッシャイマシタ。
  オヂイサンハ、トウトウ シバラレテ シマヒマシタ。

 

 

 

       二十二 ユメ

 ユウベ、ネドコニ ハイッテカラ 考ヘマシタ。
 私ニハ、オトウサンモ アリマス。オヂイサンモ アリマス。ケレドモ、オヂイサンノ オトウサンハ、オイデニ ナリマセン。
 今ハ、オイデニ ナラナイガ、前ニハ、オイデニ ナッタニ チガヒ アリマセン。ソレハ、ドンナ オカタデ アッタ デセウ。
 コンナ コトヲ 考ヘテ ヰル ウチニ、イツノマニカ ネムッテ シマヒマシタ。
 ユメニ、ヒロイ ノハラヲ 見マシタ。
  花ガ 一メンニ 咲イテ、テフテフガ トンデ ヰマシタ。
  ソコヘ、一人ノ オヂイサンガ 出テ 來マシタ。見ルト、私ノ オヂイサンニ ヨク ニタ カタ デシタ。
  私ハ 思ハズ、
「オヂイサン。」
ト イヒマスト、ソノ カタ ハ、
「ワタシハ、オマヘノ オヂイサンノ オトウサン ダヨ。」
ト イッテ、ニコニコ ナサイマシタ。

 

 

 

          ニ十三 机とこしかけ

 先生が、こんな お話を なさいました。
「みなさんの つかって ゐる 机も こしかけも、長い 間 はたらいて ゐ
  ます。
 二年生も、これで べんきゃうを しました。三年生も、これで べんき
 ゃうを しました。
 四年の 人も、五年の 人も、六年の 人も、その 前の 人も、これを つ
  かひました。みなさんの 生まれる 前から、この 机も こしかけも、あ
  ったの です。」
  ここまで お話を きいた とき、ふと、私は、ゆうべの ゆめの ことを 思ひ出しました。
  先生は、つづけて おっしゃいました。
「こんど、みなさんが 二年生に なったら、新しい 一年生が はいって 來  
  て、また つかひます。この 机や こしかけを、かはいがって やりませ
  うね。」

 

 

 

         二十四 ウグヒス

「勇サン、モウ 七時 スギマシタ。早ク オキナイト、學校ガ オクレマスヨ。」
ト、ネエサンガ イヒマシタ。
「ハイ。」
ト、勇サンハ ヘンジヲ シマシタガ、マタ ネテ シマヒマシタ。
「勇サン、勇サン、早ク オキナイト、學校ガ オクレマスヨ。」
ネエサンハ、前ヨリモ 大キナ コヱデ イヒマシタ。
  勇サンハ、スグ オキヨウト 思ヒマシタ。ケレドモ、ネムクテ ネムクテ タマリマセン。
  ソノ時、庭ノ 方デ、
「ホウ ホケキョ。」
ト、ナク コヱガ シマシタ。
  ネエサンハ、
「アラ、ウグヒスヨ。」
ト イッテ、シャウジノ ガラスカラ 外ヲ 見ナガラ、
「モウ、春デス。勇サンモ、ヂキ 二年生デハ アリマセンカ。サア、早ク オ
  オキナサイヨ。」
ト イヒマシタ。
  勇サンハ トビオキマシタ。
 庭デハ マタ ウグヒスガ、
「ホウ ホケキョ。」
ト ナキマシタ。

 

 

 

     二十五 つくし

  ぽかぽかと
  あったかい 日に、
    つくしの ばうやは
    目が さめた。
    つくし だれの 子、
    すぎなの 子。

    土手の 土
    そっと あげて、
    つくしの ばうやが
    のぞいたら、
    外は そよそよ
    春の 風。

 

 

 

       二十六 汽車

「ゴー。」
と、とほくの 方で 音が しました。
「汽車 だ。正ちゃん、見に 行かう。」
と、にいさんが いひました。
  ぼくたちは、畠の 中の みちを 走って、せんろの 方へ 行きました。
  汽車は ぐんぐん 大きく なって、こっちへ 來ます。
「くゎもつ列車 だ。長い、長い。」
と、にいさんが いひました。
「シュッ、シュッ、シュッ、シュッ。」
と、きくゎん車が 大きな 音を たてて 來ました。
「いくつ あるか、かぞへて みよう。」
と、にいさんが いひました。
  くろい はこの 車が、あとから あとから やって 來ます。
「一、ニ、三、四、五、六、七、八。」
と かぞへて、十八まで 來た 時、牛の たくさん のって ゐる 車が、いくつか 通りました。「おや。」と 思って ゐる 間に、ぼくは、車の かずが わからなく なりました。
  牛の あとから、大きな 木を つんだ 車や、石を つんだ 車が、いくつも いくつも 通りました。おしまひごろに なると、にいさんは、大きな こゑを 出して かぞへました。
「四十六、四十七、四十八。みんなで 四十八 あった。」
と いひました。
  汽車は だんだん 小さく なって、とほくの 方へ 行って しまひました。
  ぼくは、さっき 見た 牛の ことを 考へて、
「ぼくも 汽車に のりたいなあ。」
と 思ひました。


 

 

 

(漢字表)
  村 海 悄( 天 外 枝 店 急 正
  西 夕 赤 東 秋 柿 早 長 栗 前
  灰 林 行 音 弟 火 消 里 病 氣
  笑 客 學 校 私 呼 馬 冬 池 妹
  氷 雪 竹 炭 口 光 持 舟 兵 太
  郎 次 工 生 思 雲 風 吹 送 立
  朝 丸 君 代 畠 土 話 米 咲 通
  考 今 机 先 間 年 新 時 庭 春
  汽 車 走 列 牛

 

 






 

 

 

     (注) 1. 『ヨミカタ ニ』の教科書は、文部省・昭和16年8月11日発行、昭和16年9月20日
          翻刻発行。翻刻発行兼印刷者は、日本書籍株式会社となっています。
           これは、『複刻 国定教科書(国民学校期)』(ほるぷ出版刊、昭和57年2月1日)
          によりました。原本所蔵は、千葉県教育センターの由です。
           なお、巻末の漢字表の漢字の下に記してある、頁を示す数字は、省略しました。
         2. 『ヨミカタ ニ』は、国民学校1年生後期用の国語教科書です。
                 3. 広島大学図書館のホームページに
『広島大学図書館所蔵 教科書コレクション』
          というページがあり、ここで上記教科書の一部の映像を見ることができます。
          (「キーワード検索」で、「ヨミカタ」と入力して検索すると、「7 ヨミカタ ニ」が出て
           きますから、これをクリックします。) 
         4.
『兵庫県立教育研修所』のホームページにある「電子図書館eマテリアル“兵庫
          教育”」で、『ヨミカタ 二』の目次・掲載ページが見られます。
                         兵庫県立教育研修所 → 電子図書館eマテリアル → 「本をさがす」 
                     → 検索に「ヨミカタ 二」と入力 → 「ヨミカタ 二」をクリック
             
 お断り: 残念ながら現在は見られないようです。(2017.11.03)
             5. 国民学校期の国語教科書(1年用〜6年用)の目録(目次)は、資料103にあり
          ます。
         6.  資料105に
『ヨミカタ 一』の本文(全文) があります。
               資料144に
『よみかた 三』の本文(全文) があります。
                       資料146に
『よみかた 四』の本文(全文) があります。
            資料154に
『初等科國語 一』の本文(全文) があります。
            資料156に
『初等科國語 二』の本文(全文) があります。   
                       資料179に 『初等科國語 三』の本文(全文) があります。
                       資料186に 『初等科國語 四』の本文(全文) があります。
                 資料189に 『初等科國語 五』の本文(全文) があります。
                       資料196に 『初等科國語 六』の本文(全文) があります。
              資料199に 『初等科國語 七』の本文(全文) があります。
             資料210に 『初等科國語 八』の本文(全文) があります。  
         7. 「資料紹介・教科書の歴史 / 絵で見る国定教科書の変遷」という、北海道教育
          大学附属図書館のホームページがあります。
         8. 『財団法人 教科書研究センター』のホームページがあり、附属の「教科書図書
          館」のページがあります。
                 9. 東京都北区に、東京書籍株式会社附設 教科書図書館 東書文庫という教科
          書図書館があります。
                10. 「五 西ハ 夕ヤケ」という文章の作者について、国立国会図書館の『レファレン
          ス協同データベース』の管理番号NIER2010008 に、石森延男であることが分かっ
          た、出ています。
(2013年5月16日付記)  
               → 『レファレンス協同データベース』管理番号NIER2010008




                トップページ(目次)  前の資料へ 次の資料へ