室長室015 詩「消えた星」

 
        

 

  消えた星

星が姿を消してから
多くの歳月が無心に流れた
そのあいだ地球は闇で
虫の音ひとつ、物音一つ聞こえなかったようだ

(星は夜空に輝いているもの)
私はやっとそれだけの真理を思い浮かべて
雲ひとつない天空を見上げたが
澄徹した大気ばかりが奇妙に蒼くて
ひとかけらの星さえ目に映らなかった

ああ、どこかで絶えだえに虫が鳴いてる
生き延びた奴もいるのだな

私はうつろな目をあげて再び空を見上げたが
澄み切った夜空はいたずらに蒼いばかりで
星のひとかけらさえ目に入らなかった

地球は既うにその軌道をふみはずしていた

 



  (注) 1.  昭和32年に作った、昔の詩です。
 地球が軌道を踏み外しても、星が消えることはないだろうとも思うのですが、やはりこの場合は闇の世界でなければ自分の気持ちが表せないと思うので、このままにして置きたいと思います。ブラックホールのような、未知の奇怪な空間に迷い込もうとしているということも、あるいは考えられるでしょうか。(2006.02.25)
   
           
           





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