室長室010 詩「りんどうに寄す」


                
りんどうに寄す  

 

たそがれの高原に
花開いているものは、
りんどう。
この世にまぎれ出でた
小さな天使。

かすかに息づいている
その花びらは、
褪せてゆく空の青さを
さながら吸い取って、
明日へと持ち来たす
天使の日課
(つとめ)
明日の空も 清らかな
神のものであるように、と。

ああ、清楚な花
りんどう。
暮色せまる
この草原にあって、
おまえの まなざしの
何と清らかで
満ち足りていることか。

りんどう、
わが心のりんどう。
ひそやかに咲き出でた
小さな天使。
今宵の夢を
澄んだ青さで色どるであろう
天使。

           
           
(1957年)

 

 

  




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