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(注) |
1. |
上記の本文は、『日本學叢書 第八巻』(雄山閣、昭和13年11月22日発行)所収の『及門遺範』によりました。巻頭の凡例に「文久二年版本を底本とした」とあります。(校訂・註釈は、高木成助氏。文久二年は、西暦1862年です。)
この『日本學叢書 第八巻』には書き下し文と語註がついていて、参考になります。
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2. |
前置きの部分にある「然自幼從遊歳月尤蚤」の「蚤」は、原文には、「癶」+「虫」という形の俗字が用いられています。(音、ソウ。訓、はやし、はやい。) |
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3. |
『及門遺範』は、会沢安(正志斎)の著述で、嘉永3年(1850)に執筆され、翌嘉永4年(1851)に出版されました。
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4. |
「及門」の「門」とは、正志斎の師である藤田幽谷の門のことです。正志斎が藤田幽谷の家塾青藍舎で学んだ、その青藍舎における幽谷先生の教育について述べたものです。 |
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5. |
『日本學叢書 第八巻』の巻頭に平泉澄氏の解説があり、その中で平泉氏は、「及門遺範は正志斎先生が嘉永三年に、既にそれより二十四年前になくなりました恩師幽谷先生を追慕し、先生の門下教育の方針を記録して、学者の参考に供せられたものであります。当時正志斎先生は既に七十歳、其の名天下に聞えたる碩学であり大家であるに拘らず、昔の恩師を追慕して、自ら受けたる薫陶を詳細に記録し、恩師の精神を明かにして、その教訓を人にも分たうとせられました事は、まことに美しいといはねばなりません」と述べておられます。(同書、11~12頁) |
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6. |
〇藤田幽谷(ふじた・ゆうこく)=江戸後期の儒学者。名は一正。水戸の商家生れ。東湖の父。立原翠軒に学び、18歳で「正名論」を著し、水戸学の立場を確立。のち翠軒と対立。彰考館総裁。著「修史始末」「勧農或問」など。(1774~1826)
〇会沢正志斎(あいざわ・せいしさい)=江戸後期の儒学者。名は安(やすし)。水戸藩士。藤田幽谷に学ぶ。彰考館総裁・弘道館総教。著「新論」で尊王攘夷を唱え、幕末期の政治運動に大きな影響を与えた。(1782~1863)(この項はいずれも、『広辞苑』第6版によりました。) |
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7. |
『国立国会図書館デジタルコレクション』の中に、明治15年(1882年)6月に大阪の浅井吉兵衛という人が出版した、和装本の『及門遺範』があって、本文を読むことができます。ここに掲げた『日本學叢書 第八巻』の本文と同じですが、一部、漢字の字体の違いが見られます。
『国立国会図書館デジタルコレクション』→『及門遺範』 |
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8. |
續日本史籍協会叢書『藤田幽谷関係史料二』(昭和10年6月25日発行。昭和52年11月20日覆刻、東京大学出版会発行)の中にも『及門遺範』が収録されていますが、同書巻末の「解題」によれば、「本書はもと書名を『幽谷全集』といい、仙湖菊池謙二郎氏の編纂にかかり、昭和十年六月、元東京高等師範学校教授吉田弥平氏が非売品として公刊したもの」の由です。 |
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9. |
ここに掲げた、文久二年版本を底本とした『日本學叢書 第八巻』所収の『及門遺範』の本文と、 『藤田幽谷関係史料二』所収の本文との異同を次に示しておきます。
(『日本學叢書 第八巻』所収の本文)(『藤田幽谷関係史料二』所収の本文)
然自幼從遊歳月尤蚤 然自幼從遊歳月尤舊
著書論古今執喪得失 著書論執喪得失(「古今」なし)
推其孝以及人者如此 推其孝及人者如此(「以」なし)
四海萬國之形勢變革 四海萬國形勢之變革(「之」の位置)
誦習陳言踈迹 誦陳言踈迹(「習」なし)
前後相照應喚呼者 前後相照應喚吁者
而其折齊人驕慢之氣 而折齊人驕慢之氣(「其」なし)
其於武技亦不可謂無益 若於武技亦不可謂無益
相信最深 相信最篤
先生於文學網羅古今 先生於文學忘旁羅古今
嘗有送序曰 嘗有贈序曰
講究典章制度 典章制度(「講究」なし)
蒲生君臧亦務講究典故 蒲生君臧務講究典故(「亦」なし)
先生好誦古人歌詞以勸勵後生而從遊之士 先生好誦古人歌詞從遊之士(「以勸勵後生而」なし)
自古事記書紀所載而及萬葉 自古事記書紀所載及萬葉(「而」なし)
其發明之説大抵(「所」なし) 其所發明大抵(「之説」なし)
與管仲治齊同意(「其」なし) 與管仲治齊同其意
即司徒之六郷 即司徒之六卿 |
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10. |
資料175に「会沢正志斎「時務策」」があります。
資料426に「会沢正志斎『新論』巻上(読点のみの本文)」があります。
資料427に「会沢正志斎『新論』巻下(読点のみの本文)」があります。 |
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11. |
高須芳次郎氏は、その著『水戸学徒列伝─水戸学入門─』(誠文堂新光社、昭和16年4月20日第一刷発行)の中の「水戸学主要文献解題」で、及門遺範について次のように解説しておられます。
○及門遺範(會澤正志著)全一冊
本書は、藤田幽谷の思想・学説を要領よく述べて、水戸政教学の骨組を作つた幽谷の姿を如実に伝へ生かしてゐる。若し幽谷がなければ、東湖・正志の思想的発展も亦見られなかつたかも知れぬといふことを泌々、思はせる書だ。従つて、水戸政教学の大成する迄の逕路を知るには、欠くことの出来ない文献である。(同書、210頁) |
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