資料16 詩「記念の木」(「尋常小学国語読本巻六」所収)  

 


    
    記念の木


      村の学校のげんくわんの

       向つて右の落葉松(からまつ)は、

       わたしの子どもが植ゑたので、

       其の子はとうに戦死した。

        あの学校がたつた時、

        うちの畠にあつたのを

        死んだあの子が掘取つて、

        かついで行つて植ゑたのだ。

       あの子は十二、落葉松は

       あの子のせいより低かつた。

       それが今では学校の

       二階のまどにとゞいてる。

        あの子がいくさに行く時に、

        学校の前でふりかへり、

        「わたしの植ゑた落葉松が

        あんなに高くなりました。」

       昨日学校で校長に、

       あの木の事を話したら、

       はじめて聞いた記念の木、

       大事にするとおつしやつた。


 

  

 

 

 

(注) 1. 『尋常小学国語読本 巻六』文部省(昭和7年3月19日修正発行、昭和7年4月
               11日翻刻発行)
[『複刻 国定教科書』ほるぷ出版・昭和57年2月1日刊]により
                 ました。(教科書では、「第二十四 記念の木」です。)
            『広島大学図書館教科書コレクション画像データベース』で、教科書の
        画像を見ることができます。(下の注7をご覧ください。)
 
         
2.詩中の漢字は、常用漢字に改めました。
         3.詩中のルビは、( )を付けて示しました。
         
4.詩の1行目の「村の学校のげんくわんの」は、現代仮名遣いでは「村の
               学校のげんかんの」となります。つまり、「村の学校の玄関の」です。
                 若い人たちのために、補足しておきます。
         5.詩の作者名は示されていません。
         
6.かつての小生の同僚で今は亡きH先生が、科の懇親会の席でお酒が
               入っていい心持ちになられると、きまってこの詩を独特の調子で朗誦
                 されておられたのを懐かしく思い出します。
                 また、平成11年10月10日のNHK総合テレビで、『老いても青春燦燦
                 と
──今日も森繁節は高らかに 天真らんまんに語る人生劇場』という森繁久彌氏
                 を取り上げた番組の再放送がありましたが、この番組の中で森繁久彌氏
                 によるこの詩の朗誦があり、対談者の山川静夫氏が、森繁久彌氏が明治
                 座でこの詩を朗誦された、と話しておられました。
              この詩は、ある年齢層の人たちにとっては、忘れられない、懐かしい
                 詩なのであろうと思われます。
         7. 広島大学図書館のホームページに、 広島大学図書館教科書コレクション
       
画像データベース』というページがあり、ここで上記教科書の全部の画像
       見ることができます。
        
操作方法:
        
→  画面左側にある「キーワード検索」をクリックして、「尋常小学国語読本」と
         入力して検索。
        → 11番目に出て来る「尋常小学国語読本巻六 / 文部省 [編] 」をクリックする。
 
        → 「ファイル」のところに出ている画像の右上にある「41375.(34.0MB)」をクリック。
        →  下に「開く」「保存」「キャンセル」と出てくるので、「開く」か「保存」のどちらかを
          選んでクリック。
        →  「開く」の場合、Adobe Acrobat Reader DC の場合は、教科書の表紙の画面が
          出てくるので、上部にある「〇に下向き矢印(↓)」の印をクリックすると、次の
          ページに移動します。(マウスの「スクロールボタン(=ホイール)」を使っても
          次のページに移動できます。)

      8. 東京都北区に、
東京書籍株式会社附設 教科書図書館 東書文庫という教科
       書図書館があります。

 

 

 


    

         トップページ(目次)  前の資料へ  次の資料へ