資料182 Do not stand at my grave and weep (「千の風になって」の原詩)

 


 

                   Do not stand at my grave and weep   
 

 

 

 



 

 

 


  (注) 1. 上記の詩は、“TIMES ONLINE”というサイトに掲載されている、2004年11月5日付けの“The Times” の記事によりました。この記事は、この詩の作者とされる Mary Frye の死を報じた記事です。
(この詩には、細かいところに違いのある、さまざまな形のものがあって、どれを採るべきか迷うのですが、一応、上記のものにしておきました。)

(今、“TIMES ONLINE”で、“The Times”の記事を捜してみましたが、うまく辿り着けませんでした。捜し方が悪いのかどうか、一応ここに記しておきます。2012年6月28日)
 
         
    2. この詩の作者については、Mary Frye(1905−1994)というアメリカ人の女性が1932年に作詩したという説が有力なようですが、新井満氏は、著書『千の風になって』(講談社、2003年11月6日第1刷発行)の<「あとがき」に代える十の断章>の中で、「インターネット上では、作者をめぐって様々な説が飛びかっている。十九世紀末にアメリカに移住したイギリス人男性であるという説、メリー・E・フライというイギリス(ママ)人女性が1932年に書いたという説、マリアン・ラインハルトというアメリカ人女性が書いたとする説、米国先住民族の伝承であるとする説などいろいろだが、はっきりしたことは何もわかってはいない。」と書いておられます。
 そして、「この十二行の英語詩にもりこまれた独特な思想から、作者の国籍や性別を推理すると、(略)作者の考え方や感じ方が、アニミズムに近いこと」「この詩が英語で書かれた」ことなどから、「ネイティブ・アメリカンの誰かが書いた、と推理するのがもっとも自然ではなかろうか」と言っておられます。(同書 62〜64頁。詳しくは同書をご覧ください。)
 なお、インターネット上に『「千の風になって」の詩の原作者について』(執筆:マオーマミア Quinn )というページがあって、ここでは、この詩の原作者を Mary Frye としています。そして、Mary Frye は著作権を主張しないと言っていたそうです。(引用者注: ただし、他のサイトによると、原作に Wilbur Skeels が手を加えた形の詩があって、それには著作権があるようです。)
 
         
    3. 詩には題がついていないそうですので、ここでは詩の最初の1行を取って題としました。  
         
    4. わが国では、新井満氏の日本語詩・作曲による「千の風になって」という歌で、ひろく知られるようになりました。
 新井満氏の「千の風になって」という歌の歌詞は、新井氏のホームページ『マンダーランド通信』でも見ることができます。

  『マンダーランド通信』
   <「千の風になって」関連ページとある「関連ページ」をクリック 
     →  「千の風になって」詳細 ぜひお読み下さいの「詳細」の部分をクリック
     →   「千の風になって」の歌詞
 
         
    5. 見開き15枚の美しい写真に詩句を配した、新井満氏の写真詩集『千の風になって』(講談社、2003年11月6日第1刷発行)から、お許しを得て「千の風になって」という日本語詩を引用させていただきます。(同書 35頁)  
         
     


千の風になって
a thousand winds
作者不明  日本語詩 新井満

私のお墓の前で  泣かないでください
そこに私はいません  眠ってなんかいません
千の風に  千の風になって
あの大きな空を  吹きわたっています
 
秋には光になって  畑にふりそそぐ
冬はダイヤのように  きらめく雪になる
朝は鳥になって  あなたを目覚めさせる
夜は星になって   あなたを見守る

私のお墓の前で  泣かないでください
そこに私はいません  死んでなんかいません
千の風に  千の風になって
あの大きな空を  吹きわたっています
      
千の風に  千の風になって
あの 大きな空を  吹きわたっています

あの 大きな空を  吹きわたっています

(出典・新井満著・写真詩集『千の風になって』講談社刊)

 
         
    6. 新井満氏が採用された英語の詩は、IRAテロの犠牲となって戦死したイギリス軍兵士、ステファン青年が書きのこしたものだそうです。次にそれを掲げておきます。(写真詩集『千の風になって』講談社刊、巻頭より)  
         
     


a thousand winds
Author  Unknown


Do not stand at my grave and weep
;
I am not there, I do not sleep.

I am a thousand winds that blow.
I am the diamond glints on snow.
I am the sunlight on ripened grain.
I am the gentle autumn's rain.

When you awaken in the morning's hush,
I am the swift uplifting rush
Of quiet birds in circled flight.
I am the soft stars that shine at night.

Do not stand at my grave and cry
;
I am not there, I did not die.
 

 
         
       なお、NHK総合テレビで2007年2月10日に放送された特別番組「千の風になって」で、新井氏がこの詩について語っておられ、この詩が映像として出ていました。
(この番組は、初め 2006年11月6日 21:00-22:30(90分)に「ハイビジョン特集」としてNHKBSハイビジョンで放送されました。その後、2006年12月17日 16:45-18:00(75分)にNHK総合テレビで放送され、2007年1月25日 10:00-11:50(110分)にNHK BSハイビジョンで再放送され、今回 2007年2月10日 16:00-17:30(90分)が4回目の放送だったそうです。)
 
         
    7. 『日本ペンクラブ・メールマガジン「PEN」』の第11号(2004年5月10日)に、 新井満氏の講演『千の風になって』が掲載されていて、参考になります。 
 お断り: 現在は見られないようです。(2017.11.02)
 
         
    8. 南風椎(はえ・しい)氏の訳による 『あとに残された人へ 1000の風』(三五館、1995年6月16日初版発行。ポケット・オラクル6)という本が、新井満氏の本よりも前に出版されています。この本も、小さな美しい風景写真に詩句をと配した写真詩集もいうべきもので、こちらは詩と写真だけで構成されていて文章はありません。南風氏は、氏が拠られた原詩を省略なしに訳しておられます。 
 次に、この英語の詩を日本で最初に訳された南風氏の訳詩を、氏のホー ムページ『南風椎の「森の日記」』から転載させていただきます。
 
         
     


『1000の風』
訳 南風椎



私の墓石の前に立って
涙を流さないでください。

      
私はそこにはいません。
      

眠ってなんかいません。


私は1000の風になって
吹きぬけています。


私はダイアモンドのように
雪の上で輝いています。


私は陽の光になって
熟した穀物にふりそそいでいます。


秋には
やさしい雨になります。

        
朝の静けさのなかで
あなたが目ざめるとき


私はすばやい流れとなって
 駆けあがり


鳥たちを
空でくるくる舞わせています。


夜は星になり、


私は、そっと光っています。


どうか、その墓石の前で
泣かないでください。


私はそこにはいません。


私は死んでないのです。



Copyleft by Hae Shii  1995-2010


 
         
    9. 南風氏は、2015年9月に亡くなられたそうです。 『南風椎の「森の日記」』に、次のように出ていました。(2017年11月2日)
「FLY Communications
代表の長野眞(南風椎)は、去る2015年9月9日に永眠し、 “1000の風”となりました。67年間のこの世の旅を終え、今頃はきっと世界中を自由気ままに飛びまわっていることでしょう!」ご冥福をお祈りいたします。
 
         
    10. フリー百科事典 『ウィキペディア』に “Do not stand at my grave and weep”の項があります。  
         
    11. businessballs” というサイトに掲載されている、Mary Frye の原作とされている詩を、参考までに引用しておきます。これが本当に Mary Frye  が最初に書 いた形かどうかは分かりませんが。  
         
     

Do not stand at my grave and weep,
I am not there, I do not sleep.
I am in a thousand winds that blow,
I am the softly falling snow.
I am the gentle showers of rain,
I am the fields of ripening grain.
I am in the morning hush,
I am in the graceful rush
Of beautiful birds in circling flight,
I am the starshine of the night.
I am in the flowers that bloom,
I am in a quiet room.
I am in the birds that sing,
I am in each lovely thing.
Do not stand at my grave and cry,
I am not there. I do not die.
                     
(“businessballs”による)

 
         
    12. NHKオンラインの『解説委員会』というブログに、2007年12月10日(月)に放送された「視点・論点」の、宗教学者・山折哲雄氏「宮沢賢治と千の風」という文章が掲載されています。
(現在は見られないようなので、リンクを外しました。2012年6月27日)
 
         
    13. 朝日新聞DIGITAL に、「千の風になったあなたへ贈る手紙」(新井満インタビュー)があります。
  → 「千の風になったあなたへ贈る手紙」(新井満インタビュー)
 
         

 

 


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