室長室005   詩「高原にて」

              
                         
            
高原にて            

 

あけがた
山は一面の雲霧に
冷たい風さえ吹いていた

背に高い茶臼山の
懐かしい山肌も いまは
吹き煙る雲霧のなかに

そうして 広い視界は
明け方の鈍い光のなかを
流れる霧と冷たい風の声ばかり……

──人気ない宿の玄関
(ポーチ)
小柄な犬が
人恋しさにすり寄ってくる


 

 

 

 



   この「高原にて」という詩は、昭和30年代半ばに、当時はどの職場でもごく普通に行われていた年一回の職員旅行で那須高原を訪れ、「一望閣 」という旅館に宿泊したときのことを詠んだ詩です。  
     日本交通公社発行の雑誌 『旅』 の1972(昭和47)年6月号の「読者の広場」の巻頭詩として掲載されました。  








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