資料668 朱利槃特のこと(『増壹阿含経』より。『大正新脩大蔵経』による



        朱利槃特のこと
            
『増壹阿含經 巻第十一』所収(『大正新脩大蔵経』第二巻による)

聞如是。一時佛在舎衛國祇樹給孤獨園。爾時尊者槃特告弟朱利槃特曰。若不能持戒者還作白衣。是時朱利槃特聞此語已。便詣祇洹精舎門外立而墮涙。爾時世尊以天眼清淨觀是朱利槃特比丘在門外立。而悲泣不能自勝。時世尊從靜室起如似經行。至祇洹精舎門外告朱利槃特曰。比丘。何故在此悲泣朱利槃特報曰。世尊。兄見驅逐若不能持戒者。還作白衣不須住此。是故悲泣耳。世尊告曰。比丘。勿懷畏怖。我成無上等正覺。不由卿兄槃特得道。爾時世尊手執朱利槃特。詣靜室敎使就坐。世尊復敎使執掃㨹汝誦此字爲字何等。是時朱利槃特誦得掃復忘㨹。若誦得㨹復忘掃。爾時尊者朱利槃特誦此㨹掃乃經數日。然此掃㨹復名除垢。朱利槃特復作是念。何者是除何者是垢。垢者灰土瓦石。除者清淨也。復作是念。世尊何故以此敎悔我。我今當思惟此義。以思惟此義。復作是念。今我身上亦有塵垢。我自作喩。何者是除何者是垢。彼復作是念。縛結是垢智慧是除。我今可以智慧之㨹掃此結縛。爾時尊者朱利槃特思惟五盛陰成者敗者。所謂此色色習色滅。是謂痛想行識成者敗者。爾時思惟此五盛陰已。欲漏心得解脱。有漏心無明漏心得解脱。已得解脱便得解脱智。生死已盡梵行已立。所作已辦更不復受胎有。如實知之。尊者朱利槃特便成阿羅漢。已成阿羅漢即從坐起詣世尊所。頭面禮足在一面坐。白世尊曰。今已有智今已有慧今已解掃㨹。世尊告曰比丘。云何解之。朱利槃特報曰。除者謂之慧。垢者謂之結。世尊告曰。善哉比丘。如汝所言。除者是慧垢者是結。爾時尊者朱利槃特向世尊。而説此偈
    今誦此已足 如尊之所説 
    智慧能除結 不由其餘行
世尊告曰。比丘。如汝所言。以智慧非由其餘。爾時尊者聞世尊所説。歓喜奉行


  (注) 1.  上記の本文は、『大正新脩大蔵経』第二巻 阿含部下(大正一切経刊行会 大正13年9月15日発行)に拠りました。ただし、本文に付いている句点だけは残して返り点は省略しました。
 この本文は「増壹阿含経巻第十一 善知識品第二十」の(12)に出ています。訳者については、東晋異体字賓三藏瞿曇僧伽提婆譯とあります。
 『大正新脩大蔵経』第二巻 阿含部下は、国立国会図書館デジタルコレクションに入っています。
 → 国立国会図書館デジタルコレクション
 → 『大正新脩大蔵経』第二巻 阿含部下 309/456
   
    2.  朱利槃特(しゅりはんどく)について
 しゅりはんどく【周利槃特】=(梵語 Cūḍapanthaka )釈尊の弟子の一人。兄の摩伽槃特が聡明だったのに比し、非常に愚鈍であったが、仏の教えにより後に大悟したという。悟りに賢・愚の別がないことのたとえとされる。槃特。(『広辞苑』第7版による。)
 しゅうりはんどく【周利槃特・周利盤特】=(梵 Cūḍapanthaka )釈尊の弟子の一人。兄の摩伽槃特が聰明だったのに比し愚鈍であったが、後に大悟したという。十六羅漢の一人。半託迦、般陀、般兎などとも称する。しゅりはんどく。転じて、愚か者。ばか者。*方丈記(1212)「わづかに周利槃特が行にだに及ばず」(『精選版 日本国語大辞典』による。)

 引用者注:どういうわけか、どちらも「朱利槃特」とも書かれることには触れていません。。  
 梵語の Cūḍapanthaka をどう読むかによって、「しゅりはんどく」「しゅうりはんどく」の二つの読みが生まれ、漢字も「朱利槃特」「周利槃特」「周利盤特」という当て字が生まれたのでしょう。
   
    3.  〇フリー百科事典『ウイキペディア』に「周利槃特」の項目があります。ただし、「この項目は仏教・宗教家に関連した書きかけの項目で、加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています」としてありますので、その点注意してください。
 → フリー百科事典『ウィキペディア』
 → 周利槃特

 〇日本仏教学院のサイトに、「仏教ウェブ入門講座」があって、そこに「周利槃特(しゅりはんどく)とは?」があって参考になります。
 → 日本仏教学院
 → 「仏教ウェブ入門講座」「周利槃特(しゅりはんどく)とは?」
   
    4.  『大正新脩大蔵経』第二巻 阿含部下に記載されている本文の異同について触れておきます。
(1)便詣祇=便詣祇(明本)
(2)以天眼清淨觀=以天眼清淨觀(宋・元・明三本)
(3)朱利槃特報=朱利槃特報(元本)
(4)詣靜室敎使就坐=詣靜室敎使就坐(將あり。宋・元・明三本)
(5)世尊復敎使執掃=世尊復敎使執掃(宋・元・明三本)
  その他の「」も「
(6)世尊何故以此敎我=世尊何故以此敎我(宋・元・明三本)
(7)所作已辦更不復受有=所作已辦更不復受有(宋本)
             =所作已辦更不復受有(元本・明本)
(8)已成阿羅漢即從起詣世尊所=已成阿羅漢即從起詣世尊所(宋・元・明三本)
(9)爾時尊者聞世尊所説
爾時尊者聞所説(宋・元・明三本)

(付記)『SAT大正新脩大藏經テキストデータベース』に出ている東京大学総合図書館蔵の『増壹阿含經』巻十一〔嘉興藏(万暦版大藏經)〕には、この資料668として引いた『大正新脩大蔵経』第二巻阿含部下の本文「爾時尊者朱利槃特誦此㨹掃乃經數日」の「㨹掃」が「掃篲」となっています。
   →『SAT大正新脩大藏經テキストデータベース』

   
    5.  この話をやさしく書いたものが次の資料にありますので、ご覧ください。
 → 資料669 朱利槃特(二入素堂著『お釈迦様がやさしく説いた仏教入門』より)
   
           
     

 

   








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