資料640 先春梅のこと(前田香径著『水戸を語る』より)



 今の齒科醫伊勢さんのゐる邊りに寛政年間岡崎蘇衛門といふ者が邸を構へてゐた、この邸内に梅の老樹があつてこれを『先春梅』といつた、寛政三年正月十一日藩主文公はこの岡崎の邸へ御成りになつて詩を吟じた、蘇衛門も詩人だつたと見えて、多くの學者に詩を請ふて一巻を編んだ、櫻井安享が序文を書いて居るが烈公は碑を立てゝこの先春梅の事を誌るした。
 よほど珍らしい梅だつたと見えるが、その梅も碑も今は黒羽根町にないやうである。その後兒玉園衛門といふ人がこの屋敷に住んだ事になつてゐるが、(以下、略)


  (注) 1. 本文は、昭和58年に発行された前田香径著『江戸時代の水戸を語る』(常陸書房、昭和58年4月10日発行)によりました。『江戸時代の水戸を語る』は、昭和6年に発行された『水戸を語る』(水戸を語る出版会、昭和6年10月25日発行)の複刻版です。
     
   
    2. 文中に「櫻井安享が序文を書いて居るが」とありますが、櫻井安享は櫻井安亨が正しいようです。
この「序文」は、櫻井安亨の『居易堂遺稿 乾』に出ています。
  →  資料623 梅花詩序(櫻井安亨著『居易堂遺稿 乾』より) 
                       
   
           
           
 
 


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