資料623 梅花詩序(桜井安亨著『居易堂遺稿 乾』より)




          
梅花詩序       桜井安亨

草木之微、托詩賦、以致不朽於千載、可謂奇矣、甘棠
之蔽芾、緑竹之猗々、南之於召、風之於衛、雖必竢
誦詠而傳、亦唯由召伯衛武之爲德也已、湖蓴岡崎
翁之家翁稱蘇衛門爲土藏番頭宅在城西黒羽巷有梅樹、老幹偃蹇
可以蔽牛、花重淡紅、極佳、今春二月、方盛開、上公
聞之、枉駕賞之、於是乎、翁欲詩之以傳子孫、爲具不
可諼也、子健林君、好事之士也、爲請之諸賢、得詩凡
若干首、装成一巻、以貽之、乃屬余序、嗚呼上公之就
國、數月之際、善政屢行、上下咸沐浴具德、公駕所過、
皆曰、 公之所指顧也、 公之所憩息也、莫不加敬、
况翁之家乎、夫後之視今、亦猶今之視昔、甘棠緑竹、
南之風、後人所誦、具在於斯歟、是在於斯歟、寛政辛
亥五月、櫻井安亨撰、

〔読点を除いた本文〕
草木之微托詩賦以致不朽於千載可謂奇矣甘棠
之蔽芾緑竹之猗々南之於召風之於衛雖必竢
誦詠而傳亦唯由召伯衛武之爲德也已湖蓴岡崎
翁之家翁稱蘇衛門爲土藏番頭宅在城西黒羽巷有梅樹老幹偃蹇
可以蔽牛花重淡紅極佳今春二月方盛開 上公
聞之枉駕賞之於是乎翁欲詩之以傳子孫爲具不
可諼也子健林君好事之士也爲請之諸賢得詩凡
若干首装成一巻以貽之乃屬余序嗚呼上公之就
國數月之際善政屢行上下咸沐浴具德公駕所過
皆曰 公之所指顧也 公之所憩息也莫不加敬
况翁之家乎夫後之視今亦猶今之視昔甘棠緑竹
南之風後人所誦具在於斯歟是在於斯歟寛政辛
亥五月櫻井安亨撰



1. 上記の本文は、櫻井安亨著『居易堂遺稿  乾』によりました。
よく読み取れない文字があるため、誤字・脱字があるおそれがあります。その点ご注意ください。
小文字にしたところは、2行分かち書き(割注)になっているところです。
    2. 〇文中の「岡崎翁」とは、割注にあるとおり「岡崎蘇衛門」のことです。
〇「今春二月」は、寛政3年(1791年)2月のこと。
〇「上公」とは、当時の水戸藩主6代徳川治保(はるもり)のこと。治保公は、前年寛政2年11月に帰国し、翌寛政3年5月には江戸へ戻っています。
〇「寛政辛亥」は、寛政3年。
   
    3. 櫻井安亨(さくらい・あんきょう)=水戸藩に仕え
   た儒者。明和3年(1766年)生まれ。名は安
   亨、字は君節、通称彦之丞、龍淵と号した。
   立原翠軒の親愛を受け、彰考館副総裁として
   館務を委任された。文化2年(1805)、40歳
   で病死した。「龍淵先生詩集」「居易堂遺稿
   乾・坤」などの著がある。(『水戸市史 中
   巻(二)』を参考にしました。)
   





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