資料630 最澄「願文」 (句点つき)



       願 文      最 澄  

悠悠三界。純苦無安也。擾々四生。唯患不樂也。牟尼之日久隱。慈尊月未照。近於三災之危。沒於五濁之深。加以。風命難保。露體易消。艸堂雖無樂。然老少散曝於白骨。土室雖闇迮。而貴賤爭宿於魂魄。瞻彼省己。此理必定。仙丸未服。遊魂難留。命通未得。死辰何定。生時不作善。死日成獄薪。難得易移其人身矣。難發易忘斯善心焉。是以。法皇牟尼。假大海之針。妙高之線。喩況人身難得。古賢禹王。惜一寸之陰。半寸之暇。歎勸一生空過。無因得果。無有是處。無善免苦。無有是處。伏尋思己行迹。無戒竊受四事之勞。愚癡亦成四生之怨。是故。未曾有因縁經云。施者生天。受者入獄。提韋女人四事之供。表末利夫人福。貪著利養五衆之果。顯石女擔轝罪。明哉善惡因果。誰有慙人。不信此典。然則。知苦因而不畏苦果。釋尊遮闡提。得人身徒不作善業。聖敎嘖空手。於是。愚中極愚。狂中極狂。塵禿有情。底下㝡澄。上違於諸佛。中背於皇法。下闕於孝禮。謹隨迷狂之心。發三二之願。以無所得而爲方便。爲無上第一義。發金剛不壤不退心願。我自未得六根相似位以還不出假。其一自未得照理心以還不才藝其二自未得具足淨戒以還不預檀主法會。其三自未得般若心以還不著世間人事縁務除相似位。其四三際中間。所修功德。獨不受己身。普回施有識。悉皆令得無上菩提。其五伏願。解脱之味獨不飲。安樂之果獨不證。法界衆生。同登妙覺。法界衆生。同服妙味。若依此願力。至六根相似位。若得五神通時。必不取自度。不證正位。不著一切。願必所引導今生無作無縁四弘誓願。周旋於法界。遍入於六道。淨佛國土。成就衆生。盡未來際。恒作佛事

 
 原本 比叡山淨土院藏版明和四丁亥年刊本一巻四大師傳


  (注) 1. 本文は、『国立国会図書館デジタルコレクション』所収の『伝教大師全集 第一』(天台宗宗典刊行会、明治45年7月4日発行)によりました。
  『国立国会図書館デジタルコレクション』『伝教大師全集 第一』
   
    2. 初めのほうにある「五濁之深」の「深」は、全集の本文には異体字()が用いられていますが、ここの本文では普通の字体(深)に直してあります。この異体字「㴱」は、『漢字辞典』というサイトからコピーさせていただきました。
   →『漢字辞典』
   
    3. ここには全集の本文にある句点がつけてありますが、句点を省略した本文や書き下し文が資料629にあります。
  → 資料629 最澄「願文」
   
           
           
           




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