資料359 佐久間象山『省諐録』(原文・白文)
省 諐 録 佐久間象山
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所行之道可以自安所得之事可以自樂罪之有無在我而已由外至者豈足憂戚若以忠信受譴爲辱則不義而富且貴亦在其所榮耶
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(注)
1.
上記の『省諐録』(原文・白文)の本文は、 『国立国会図書館デジタルコレクション』に収められている『象山全集 上巻・下巻』(信濃教育会編、尚文館・大正2年9月30日発行)によりました。『省諐録』は、上巻の本文の最初に載っています。
→ 『国立国会図書館デジタルコレクション』 (『象山全集 上巻』
92~122/689 )
ただし、『象山全集』にある句点(。)を省略してあります。
『省諐録』の「附録」(詩賦・和歌など)は、資料476として別に掲載してあります。(2014年1月19日)
→ 資料476「省諐録」附録(原文・句点なし)
なお、
句点のついた『省諐録』の本文が、資料358にあります。
2.
本文の誤植と思われる文字は、直してあります。
凡學問必以積累……のところ。
「亦是一大學同」→「亦是一大學問」
不知彼不知己……のところ。
「而喪已之所能」→「而喪己之所能」
士大夫必有過人之膽量……のところ。
「過人之學問才辨」→「過人之學問才辯」
3.
国立国会図書館蔵の明治4年版本『省諐録』には、勝海舟の次の「序」が掲載されています。
序
花之先於春者爲殘霜所傷説之先於時者爲舊弊所厄雖然不有先者則後者何以警起乎餘親姻象山佐久間翁先唱開化日新之説於數年前終遭厄遭厄中筆數章題省諐録藏筐底男恪亦連累流離顚沛之間守此遺稿頃携來示余因助資上木嗚呼説之魁于衆者不免遭厄今世人若以此書爲平々無奇耶則余將曰子之見識至此者豈非遭厄者之賜耶
明治四辛未晩冬
海舟勝義邦識
4.
岩波書店刊の日本思想大系55『渡辺崋山 高野長英 佐久間象山 横井小楠 橋本左内』(1971年6月25日第1刷発行)の佐久間象山の校注者は植手通有氏で、そこに収録されている「省諐録(せいけんろく)」(安政元年稿)の頭注(238頁)に、「省諐録とは、あやまちをかえりみる記録という意味である。象山は吉田松陰の密航失敗事件に連坐して、安政元年(1854)4月より9月まで、江戸伝馬町の獄につながれていた。本書はその獄中での感懐を出獄後に筆録したものである。内容は多岐にわたるが、それまでの自己の思想と行動をふりかえりながら、その道徳的および思想的正当性を主張することが、眼目となっている」とあります。
5.
日本思想大系本の「省諐録」の底本は、「国立国会図書館蔵、明治4年版本」と、凡例にあります。また、「省諐録」の「附録」(詩賦・和歌など)は紙幅の都合で割愛した」とあります。
なお、日本思想大系本には、この原文(漢文)のほかに、普通の表記に書き改めた文章(書き下し文)が載っていて、そこには頭注も付いていますので、ご参照ください。
6.
『省諐録』の「諐」(侃+言)は、「愆」(音、けん。意味、あやまつ。あやまち。)の異体字と漢和辞典にあります。
7.
佐久間象山(さくま・しょうざん)=(ショウザンは一説に、ゾウザンとも)幕末の思想家・兵学者。信州松代(まつしろ)藩士。名は啓(ひらき)。通称、修理。象山は号。儒学を佐藤一斎に学び、また、蘭学・砲術に通じ、海防の急務を主張。1854年(安政1)門人吉田松陰の密航企画に連座し、幽閉。のち許され、64年(元治1)幕命によって上洛、攘夷派の浪士に暗殺された。著「海防八策」「省諐録(せいけんろく)」など。(1811~1864)(『広辞苑』第6版による。)
8.
長野市のホームページに『象山記念館について』という紹介ページがあります。 「佐久間象山について」という紹介ページもあります。
また、『真田宝物館』というサイトに、「象山記念館」のページがあります。
9.
「象山」の読みについて
長野市松代町にある「象山神社」や「象山記念館」では、「象山」を「ぞうざん」と読んでいるようですが、日本思想大系『渡辺崋山 高野長英 佐久間象山 横井小楠 橋本左内』の巻末にある植手通有氏の解説「佐久間象山における儒学・武士精神・洋学─横井小楠との比較において─」の「追記」の中で、植手氏は「象山」は「しょうざん」と読むべきだろうとして、次のように書いておられます。
「佐久間象山の号を「しょうざん」と読むべきか「ぞうざん」と読むべきかについて、暫く前までは私は本巻に収録した「象山の説」を手掛りとして─今から考えると何ら明確な根拠もなかったのである が─いずれに読んでもよいという考えを持っており、1970年8月に松代を訪れた際にも、その旨を語った。しかし、その後(正確には1971年1月)大平喜間多著『佐久間象山逸話集』(信濃毎日新聞社、1933年)を手にするにいたって、どうしても「しょうざん」と読まなければならない、と信ずるようになった。(詳しくは同書、684~685頁を参照してください。)
岩波書店の『広辞苑』や三省堂の『大辞林』などは、見出しを「しょうざん」として、「ぞうざんとも」としてあります。
『日本大百科全書(ニッポニカ)』の解説では、「しょうざん」として出ていて、解説の中で、「一般には「しょうざん」というが、地元の長野では「ぞうざん」ということが多い」としてあります。
参考:長野市教育委員会のホームページに「長野市文化財データベース」があり、そこのデジタル図鑑」の中に「佐久間象山宅跡」があって、「佐久間象山」に「さくまぞうざん」とルビがふってあります。
10.
フリー百科事典『ウィキペディア』に、「佐久間象山」の項があります。
11.
国立国会図書館の『近代日本人の肖像』に、「佐久間象山」があり、写真と紹介文があります。
12.
中央公論社の日本の名著30『佐久間象山 横井小楠』(昭和45年7月10日初版発行)に、『省諐録』の現代語訳(松浦玲氏訳)が出ています(同書、89~110頁)。ただし、ここでも『省諐録』の「附録」(詩賦・和歌など)は割愛されています。
13.
長野市松代町にある『象山神社』(ぞうざんじんじゃ)のホームページがあります。ここに「象山記念館」のページがあります。(→TOPページの左側の「象山記念館」をクリック)
14.
『松代文化財ボランティアの会』というホームページに、「佐久間象山、象山神社、象山記念館」の紹介ページがあります。
また、象山の漢詩を解説したPDF「象山先生と漢詩(一~十八)」(佐久間方三)もあります。
→ 「象山先生と漢詩(一)」
15.
『国立国会図書館デジタルコレクション』に、『大日本文庫 勤王篇 勤王志士遺文集 一』(渡辺世祐・校、昭和15年5月5日・大日本文庫刊行会刊)が収められており、その中に佐久間象山と吉田松陰の著作があって、そこに象山の『省諐録』の書き下し文があります。(松陰の『留魂録』の書き下し文もあります。)
『省諐録』の書き下し文 ( 20~
46/287)
『留魂録』の書き下し文 (187~192/287)
16.
『国立国会図書館デジタルコレクション』に、『大日本思想全集 第17巻』吉田松陰集・佐久間象山集附會澤正志・淺見綗齋(昭和7年12月16日・大日本思想全集刊行会発行)があって、そこに『省諐録』の現代語訳、会沢正志斎の『新論』の現代語訳があります。
→ 『大日本思想全集 第17巻』の『省諐録』
17.
『国立国会図書館デジタルコレクション』に、岩波文庫の『省諐録』があります。
→ 岩波文庫の『省諐録』(飯島忠夫・訳註、岩波書店・昭和19年4月5日第1刷発行)
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