資料96 韓愈「雑説」




       雜 説      韓 愈

  世有伯樂然後有千里馬千里馬常有而伯樂不常有故雖有名馬祗辱於奴隷人之手駢死於槽櫪之閒不以千里稱也馬之千里者一食或盡粟一石食馬者不知其能千里而食也是馬也雖有千里之能食不飽力不足才美不外見且欲與常馬等不可得安求其能千里也策之不以其道食之不能盡其材鳴之不能通其意執策而臨之曰天下無良馬嗚呼其眞無馬耶其眞不識馬耶    


  (注) 1.  「雜説」の本文は、新釈漢文大系18『文章軌範(正篇)下』(前野直彬著、明治書院 昭和37年9月15日初版発行、昭和45年5月10日12版発行)によりました。
 ただし、本文についている訓点・句読点、段落分け等は省略しました。
   
    2.  韓愈の「雜説」には4篇あり、ここに掲げたものはその第4篇です。    
    3.  作者の韓愈(768~824)は、唐の文章家・詩人。唐宋八家の一人。字は退之。号は昌黎。諡は文公。河南南陽の人。儒教を尊び、特に孟子の功を賞賛。柳宗元とともに古文の復興を唱え、韓柳と並称される。詩は白居易の易平な作風に反発し、晦渋・険峻な作を多く残した。憲宗のとき「論仏骨表」を奉って帝の仏教信仰を批判したため、潮州に左遷された。「昌黎先生集」がある。(『広辞苑』第6版による。)    
    4.  題名の「雑説」について。
 「雑」とは、特に題を設けないという意味であり、「説」とは文体の一種で、道理を説き明かし、自分の意見を述べる意見文・論説文をいいますから、「雑説」とは、特に題を設けない意見文、あるいは、特に題を設けないで思いつくままに論じた論説文、ということになります。あるいは場合によっては もっと軽くとって、特に題を設けずに書いた随想、といった意味にとらえてもよいと思われます。
   
           
           





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