資料81 乃木希典「金州城下作」(詩)




          金州城下作   乃木 希典

     山川草木轉荒涼
     十里風腥新戰場
     征馬不前人不語
     金州城外立斜陽


   

       金州城下の作
   山川草木(さんせんそうもく)(うたた)荒涼、
   十里 風腥(なまぐさ)し 新戰場。
   征馬(せいば)(すす)まず 人語らず、
   金州城外 斜陽に立つ。
 


  (注) 1.   詩の本文は、新釈漢文大系46『日本漢詩 下』(猪口篤志著、明治書院昭和47年9月25日初版発行)によりました。
 作者の乃木希典については、同書の「詠富岳」の詩の「作者」の項(629~634頁)に詳しい紹介があります。       
   
    2.  この詩の題を「金州城作」とするものもあるようです。    
    3.  金州は、今の中国の東北地区、遼東半島の先端、大連の北東にあたる所で、日露戦争の激戦地であり、乃木将軍の長男陸軍歩兵中尉乃木勝典戦死の場所でもあります。勝典中尉は、明治37年5月27日に戦死、乃木将軍は6月7日にここへ来て、わが子を含めた戦死者の英霊を弔ってこの詩を作った由です。
 なお、乃木将軍は11月30日に次男保典をも二〇三高地の戦いで失っています。
   
    4.  乃木希典(のぎ・まれすけ)=軍人。陸軍大将。長州藩士。日露戦争に第三軍司令官として旅順を攻略。後に学習院長。明治天皇の大葬当日、自邸で妻静子とともに殉死。(1849~1912)(『広辞苑』第6版による。)
   
    5.  語釈  轉=「うたた」と読む。いよいよ。
     征馬=軍馬。
     城外=町はずれ。
   
    6.  国立国会図書館の『近代日本人の肖像』で、乃木希典の肖像写真が見られます。    
    7.  『国立国会図書館デジタルコレクション』で、乃木希典述・岡本学編の『修養訓』 (吉川弘文館、明治45年2月26日発行)を見る(読む)ことができます。    





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