資料697 新約聖書の日本語訳(「ヨハネ福音書」第12章23~25節による)


  聖書の日本語訳は、明治時代の訳と大正時代の改訳と、その後の口語訳や新共同訳などがあります。
ここでは、新約聖書の日本語訳の移り変わりを、ヨハネ福音書の第12章の一部(23~25節)でざっと見てみたいと思います。
   
       

      

       新約聖書の日本語訳(ヨハネ福音書 第12章23~25節)

 〇明治元訳新約聖書(めいじもとやく・しんやくせいしょ) 底本:明治37(1904)年版
   
イエス彼等に答(こたへ)て曰(いひ)けるは人の子榮(さかえ)を受(うく)べき時いたれり
誠に實(まこと)に爾曹(なんぢら)に告(つげ)ん一粒の麥もし地に落(おち)て死(しな)ずば唯一(ただひとつ)にて存(あら)んもし死(しな)ば多(おほく)の實(み)を結ぶべし
その生命(いのち)を惜(をし)む者は之(これ)を喪(うしな)ひ其生命(そのいのち)を惜(をしま)ざる者は之(これ)を存(たもち)て永生(かぎりなきいのち)に至るべし


 〇大正改訳新約聖書(たいしょうかいやく・しんやくせいしょ) 底本:大正6(1917)年版
   ヨハネ福音書 第12章23~25節

イエス答へて言ひ給ふ『人の子の榮光を受くべき時きたれり。
誠にまことに汝(なんぢ)らに告ぐ、一粒の麥(むぎ)、地に落ちて死なずば、唯一(ただひと)つにてあらん、もし死なば、多くの果(み)を結ぶべし。
己(おの)が生命(いのち)を愛する者は、これを失ひ、この世にてその生命(いのち)を憎む者は、之(これ)を保ちて永遠の生命(いのち)に至るべし。


 〇口語訳聖書(1954年)

すると、イエスは答えて言われた、「人の子が栄光を受ける時が来た。
よくよくあなたがたに言っておく。一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一つのままである。しかし、もし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる。
自分の命を愛する者はそれを失い、この世で自分の命を憎む者は、それを保って永遠の命に至るであろう。


 〇新改訳新約聖書(しんかいやく・しんやくせいしょ) 底本:『英和対照 新約聖書』(日本聖書刊行会、昭和42年(1967)11月1日発行、昭和52年(1977)10月1日6刷)に記載されている新改訳・新米国標準訳。  
   
すると、イエスは彼らに答えて言われた。「人の子が栄光を受けるその時が来ました。
まことに、まことに、あなたがたに告げます。1粒の麦がもし地に落ちて死ななければ、それは1つのままです。しかし、もし死ねば、豊かな実を結びます。
自分のいのちを愛する者はそれを失い、この世でそのいのちを憎む者はそれを保って永遠のいのちに至るのです。


 〇共同訳聖書(新約のみ。1978年)


 〇新共同訳聖書(1987年9月5日出版)

イエスはこうお答えになった。「人の子が栄光を受ける時が来た。
はっきり言っておく。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ。
自分の命を愛する者は、それを失うが、この世で自分の命を憎む人は、それを保って永遠の命に至る。



 〇世界英語聖書(WEB) フリー百科事典『ウィキペディア』によれば、WEBは1901年の「アメリカ標準訳聖書の改訂版」だとあります。

イエスは彼らに答えて言われました。「人の子が栄光を受ける時が来ました。
よく聞きなさい。一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一粒のままです。しかし、死ねば、多くの実を結びます。
自分の命を愛する者はそれを失い、この世で自分の命を憎む者は、それを保って永遠の命を得ます。


 〇聖書協会共同訳聖書(完成版 2018年)

イエスはお答えになった。「人の子が栄光を受ける時が来た。
よくよく言っておく。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ。
 自分の命を愛する者は、それを失うが、この世で自分の命を憎む者は、それを保って永遠の命に至る。



 
参考までに、英語訳の「ヨハネ福音書」のこの部分を引いておきます。

 〇『英和対照 新約聖書』(日本聖書刊行会、昭和42年(1967)11月1日発行、昭和52年(1977)10月1日6刷)に記載されている新改訳・新米国標準訳。

      And Jesus answred them, saying, "The hour has come for the Son of Man to be glorified.
"Truly, truly, I say to you, unless a grain of wheat falls into the earth and dies, it remains by itself alone; but if it dies, it bears much fruit.
"He who loves his life loses it, and he who hates his life in this world shall keep it to life eternal.
    
 

 〇欽定訳聖書(King James Version)    JOHN 12
               
      And Jesus answred them, saying, The hour is come,  that the Son of man should be glorified.
Verily, verily, I say unto you, Except a corn of wheat fall into the ground and die, it abideth alone: but if it die, it bringeth forth much fruit.
He that loveth his life shall lose it; and he that hateth his life in this world shall keep it unto life eternal.

   → King James Version
   →
 JOHN 12
    


  (注) 1.  上記の聖書の本文は、主としてネット上で見られる本文によりました。    
    2.  『ウィキソース』に、「明治元訳新約聖書(明治37年)」「大正改訳新約聖書(大正6年)」があります。
 →『ウィキソース』
  →「明治元訳新約聖書」(明治37年)
  →「大正改訳新約聖書」(大正6年)
  →「大正改訳新約聖書」(大正6年)ルビ付
   
    3.  日本聖書協会のホームページに『聖書本文検索』のページがあり、ここで「聖書協会共同訳」「新共同訳」「口語訳」の聖書本文を見ることができます。
 → 日本聖書協会
  →『聖書本文検索』
   
    4.  『ウィキペディア』に、「日本語訳聖書」の項があります。
 →『ウィキペディア』
  →「日本語訳聖書」
   
    5.  上記の本文の最後に引いた『欽定訳聖書』について、『ウィキペディア』に次のようにあります。(詳しくは『ウィキペディア』の「欽定訳聖書」をご覧ください。)
 「欽定訳聖書(きんていやくせいしょ)は、国王の命令によって翻訳された聖書である。複数あるが、単に「欽定訳」(Authorized Version)と言った場合は、とくに「ジェイムズ王訳」(King James Version)として名高い、1611年刊行の英訳聖書を指す。」
 →『ウィキペディア』
  →『欽定訳聖書』
   
           








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