(注) | 1. | 上記の『日本霊異記』の本文は、新日本古典文学大系30の『日本霊異記』(出雲路修・校注、岩波書店・1996年12月20日第1刷発行)によりました。ただし、原文についている返り点は、ここではこれを省略しました。 | |||
2. |
「上巻・非理奪他物為悪行受悪報示奇事縁第卅」の初めの方に出ている「自其椅行至彼方、有甚□国」の□の漢字は、「言+慈」の漢字です。 新日本古典文学大系30の脚注に「底本訓釈「言+茲(言+慈か)<於毛之呂支>」、新撰字鏡「言+慈 市貴反、心楽也、於毛志呂之」とあります。 |
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3. | 『日本霊異記』にほんりょういき(ニホンレイイキとも)=平安初期の仏教説話集。三巻。僧景戒撰。奈良時代から弘仁(810~824)年間に至る朝野の異聞、殊に因果応報などに関する説話116話を漢文で記した書。正しくは「日本国現報善悪霊異記」。霊異記。(『広辞苑』第7版による。) | ||||
4. |
ウィキペディアに「日本霊異記」の項があります。 → ウィキペディア →「日本国現報善悪霊異記」 |
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5. | 新日本古典文学大系30の『日本霊異記』には原文のほかに訓読文が出ています。その訓読文について凡例には、「景戒の同時代人の視点での訓読文を作成した」とあります。ぜひその訓読文を同書に当たってご覧ください。 | ||||
6. |
『日本霊異記』の本文は、上記の新日本古典文学大系30の『日本霊異記』のほかに、次のような本が出ています。(これらの研究書は、日本古典文学大系70『日本霊異記』や新日本古典文学大系30の『日本霊異記』に記載されているものやその他を参考にさせていただきました。) 〇『校訳日本霊異記』(板橋倫行 校訳、春陽堂・1929年) 〇日本古典全集『校本日本霊異記』(日本古典全集刊行会、1929年) これは国立国会図書館デジタルコレクションに入っているものです。 〇『校本日本霊異記』(佐藤謙三 校本、明世堂・1943年) 〇日本古典全書『日本霊異記』(武田祐吉 校注、朝日新聞社・1950年) 〇アテネ文庫『日本霊異記』(松浦貞俊 校注、弘文堂・1956年) 〇角川文庫『日本霊異記』(板橋倫行 校注、角川書店・1957年) 〇古典日本文学全集Ⅰ『日本霊異記』現代語訳(倉野憲司 訳、筑摩書房・1960年) 〇『校注真福寺本日本霊異記』(小泉道 校注、1962年) 〇日本古典文学大系70『日本霊異記』(遠藤嘉基・春日和男 校注、岩波書店・1967年) 〇『日本国現報善悪霊異記註釈』(大東文化大学東洋研究所・1973年) 〇日本古典文学全集『日本霊異記』(中田祝夫 校注・訳、小学館・1975年) 〇講談社学術文庫『日本霊異記(上)』全訳注・『(中)』・『(下)』(中田祝夫 訳注、1978~1980年) 〇新潮日本古典集成『日本霊異記』(小泉道 校注、新潮社・1984年) |
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7. | 霊異記の伝本について 日本古典文学大系70『日本霊異記』(遠藤嘉基・春日和男 校注、岩波書店・1967年)の解説に、小泉 道 氏の執筆による「諸本」があり、そこに次のように出ています。 「霊異記の伝本には、興福寺本(上巻だけ)・真福寺本(中下二巻)・前田家本(下巻だけ)・三昧院本(高野本、3巻あるが各巻に欠脱や省略のある流布本)の4本があり、3巻揃った完本は無い。これらはそれぞれ別系統である上、その殆んどが別本を合わせ成ったとみられる。」(同書、8頁) ここには、それぞれの伝本について小泉氏の詳しい解説が見られますが、以下にほんの少しだけ抜き書きさせていただきます。 興福寺本:上巻だけの巻子本で、序文と35条の説話が記されている。霊異記の伝本の最古のものという点で、貴重な資料。不用意によるとみられる誤写や脱字は少なからずあるが、他の伝本に多少とも存するような、後人の私意による省略や改訂などは見られない。 真福寺本:中巻と下巻の巻子本。両巻とも巻頭が破損し、序文の中途から始まり、目録のあと、中巻は42条、下巻は39条の説話が目録通りに記され、各巻末に尾題を付す。 前田家本:胡蝶装1冊の下巻だけの零本である。類聚本にない巻首201字がこれにある。前田家本の特徴の第一は、下巻の巻首が完備し、真福寺本に欠く首題・署名・序文の前半177字があること。特徴の第二は、諸本との間に説話条の異同があること。特徴の第三は、前半(下23縁まで)と後半(下24以後)とに体裁の相違があること。 三昧院本:もと高野山金剛三昧院の所蔵の3巻の巻子本だが、現在行方を失している。摹本として、江戸時代の書写とみられる国立国会図書館本と京都府立図書館本がある。前者は原本を忠実に摹したと認められるが、後者は私意による改変が目立ち、資料価値は低い。三昧院本は、その本文は興福寺本や真福寺本よりも劣るが、これらにも誤写が少なからずあるから、この二本を底本として霊異記を校訂する場合、対校本として欠かせてははならない。特に、中巻の訓釈288は当本だけにある点、貴重なものである。 刊本の群書類従本(狩谷棭齋「校本日本霊異記」)は、上巻は三昧院本(棭齋は高野本と称す)の摹本、中下巻は真福寺本(棭齋は尾張本と称す)の摹本の影鈔本をそれぞれ底本として校訂したものである。 なお、書陵部に上下二巻の日本霊異記があるが、各巻の首尾に「日本霊異記」と題しながら、その内容はいわゆる霊異記とは全く異なり、神明鏡の一異本である。霊異記が延宝本によって流布される以前においては、日本霊異記という名称が、景戒撰述の書のみに限られていなかったようだ。(同書、8~21頁より抜き書き) 以上、長々と抜き書きさせていただいたが、同書にはかなり詳しく書かれているので、詳細は同書に当たっていただきたい。 |
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8. | 『日本霊異記』の写本を幾つか挙げておきます。 〇国書データベース『日本国現報善悪霊異記』正徳4年 〇筑波大学デジタルコレクション『日本霊異記』正徳4年 〇国立公文書館デジタルアーカイブ『日本霊異記』正徳4年刊 〇興福寺本『日本霊異記』奈良地域関連資料データベース(奈良女子大学) 〇伴信友校蔵書『霊異記』京都大学貴重資料デジタルアーカイブ(中巻・下巻の中から一部が抜き書きされています。) 〇不忍文庫本『日本霊異記』上(國學院大学図書館デジタルライブラリー) |