資料655 劉伶(「酒徳頌」の作者)について(『世説新語』より) 




        劉 伶  『世説新語』より

劉伶著酒德頌。意氣所寄。   劉伶、酒德頌を著す。意氣の寄する所なり。
  名士傳曰、伶字伯倫、沛郡人。肆意放蕩、以宇宙爲狹。常乘鹿車、攜一壺酒、使人荷鍤隨之。云、死便掘地以埋。土木形骸、遨遊一世。竹林七賢論曰、伶處天地閒、悠悠蕩蕩、無所用心。嘗與俗士相迕。其人攘袂而起、欲必築之。伶和其色曰、雞肋豈足以當尊拳。其人不覺廢然而返。未嘗措意文章、終其世、凡著酒德頌一篇而已。其辭曰、有大人先生者、以天地爲一朝、萬朞爲須臾、日月爲扃牖、八荒爲庭衢。行無軌迹、居無室廬、幕天席地、縱意所如。行則操巵執觚、動則挈榼提壺、唯酒是務、焉知其餘。有貴介公子、縉紳處士、聞吾風聲、議其所以。乃奮袂攘襟、怒目切齒、陳説禮法、是非鋒起。先生於是方捧罌承槽、銜漱醪、奮髯踑踞、枕麴藉糟、無思無慮、其樂陶陶。兀然而醉、慌爾而醒、靜聽不聞雷霆之聲、熟視不見太山之形、不覺寒暑之切肌、利欲之感情。俯觀萬物之擾擾、如江漢之載浮萍、二豪侍側焉、如蜾蠃之輿螟蛉。    
       


  (注) 1.  上記の本文と注は、新釈漢文大系76『世説新語 上』(目加田誠著、明治書院  昭和50年1月25日初版発行)によりました。文学第四の69に出ています(同書313~314頁)。同書についている返り点・口語訳は省略しました。
 本文は劉義慶、注は劉孝標によるもので、注は1段下げて書いてあります。
 凡例に、前田家尊経閣本世説新語を底本とし、袁褧刊本を参照して尊経閣本の誤りと思われるところは袁本に拠った、とあります。
   
2. 注意:
 注の終わり近くに「兀然而醉」とありますが、これは大系本に「兀然曰醉」とあるのを誤変換と見て、引用者が「兀然而醉」と改めました。ご注意ください。
 また、注の中ほどに「行則操巵執觚、動則挈榼提壺」とありますが、「語釈」に「〇行則 『文選』巻47・『晋書』劉伶伝には「止則」とあり、それによって訳した」とあって、「止まれば杯を手に執り、行けば酒樽を携える」と口語訳してあります。
    3.    資料290に、劉伶「酒徳頌」(酒徳の頌)があります。
 資料656に、劉伶(「酒徳頌」の作者)について(『晋書』より)があります。
   
    4.  『国立公文書館デジタルアーカイブ』で、『世説新語』の版本の画像が見られます。(ご覧になる時は、開いた画面で、画面上部にある「JPEG」を選んでご覧ください。)
 →『国立公文書館デジタルアーカイブ』
  →『世説新語』(官板、校宋本、昌平坂学問所旧蔵、3巻、天保2年刊)
  →「酒徳頌」の部分のある巻『世説新語 二』(35/46)
   










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