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上記の「哺時臥之山(『常陸国風土記』那賀郡より)」の本文は、日本古典文学大系2『風土記』(秋本吉郎校注、岩波書店・昭和33年4月5日第1刷発行、昭和39年2月25日第5刷発行)によりました。 大系本には本文に返り点がついており、また書き下し文がついていますが、ここではその両方を省略しました。 |
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本文中の「」の漢字は、島根県立大学の"e漢字”を利用させていただきました。 「更易而置之」の「」について、大系本の脚注に、「武田訓に「瓮」(甕と同字)とするが、底本・諸本による。「」は「盆」に同じ」とあります。 底本は、大東急記念文庫の松下見林自筆本で、松下見林自筆本は元禄6年書写、加賀前田家所蔵の加賀本を書写したものと思われる、と大系本巻頭の解説にあります。 |
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哺時臥之山(くれふしのやま)は、現在の水戸市の北西方に見える朝房山(あさぼうやま)がそれだとされています。「哺時」は申の刻、夕方の意、と大系の頭注にあります。 朝房山は、笠間市池野辺・水戸市木葉下町・城里町の3市町にまたがっていますが、山頂部は笠間市池野辺にあります。標高201㍍。 |
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フリー百科事典『ウィキペディア』に、「哺時臥山(くれふしのやま)」の項があります。 フリー百科事典『ウィキペディア』→ 哺時臥山(くれふしのやま) |
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2019年10月22日の茨城新聞に、朝房山・風土記くれふし山の会(河原井忠男代表)が、常陸国風土記の蛇神伝説を後世に伝える石碑を水戸市谷津町に建て、10月19日に眺望台・顕彰碑の除幕式が行われた、と出ています。 | ||||
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古典文学大系の書き下し文をここに引くのは遠慮して、古いものですが、次田潤編『上代文学選集』(明治書院、昭和7年12月5日発行・昭和16年2月10日修正17版発行)から、「哺時臥山」の書き下し文を引かせていただきます。 次田潤編『上代文学選集』は、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されています。 国立国会図書館デジタルコレクション →『上代文学選集』 常陸国風土記「哺時臥山」は 51~52/99 に出ています。 哺時臥山 茨城ノ里。此より北に高き丘あり、名を哺時臥(くれふし)の山と曰ふ。古老の曰へらく、兄妹二人あり。兄を努賀毗古(ぬかひこ)と名づけ、妹を努賀毗咩(ぬかひめ)と名づく。時に妹室に在りしに、人有り姓名(な)を知らず。常に就きて婚(みあひ)を求め、夜來り晝去り、遂に夫婦と成り、一夕(ひとよ)にして懷妊(はら)めり。産(こう)むべき月に至りて遂に小さき蛇(へみ)を生めり。明くれば言無きが若(ごと)く、闇(く)るれば母と語りき。是(ここ)に母も伯(おぢ)も驚き奇(あや)しみ、心に神の子ならむと挾(おも)ひ、即ち淨き杯(つき)に盛りて、壇(うてな)を設(ま)けて安置(お)けば、一夜の間(ほど)に已に杯の中に滿ちたり。更に瓮(みか)を易へて置きしに、亦瓮の内に滿ちたり。かくの如くすること三たび四たびにして、器を用ゐるに敢へざりき。母子に告げて曰ひけらく、「汝が器宇(うつは)を量るに、自(おのづか)ら神の子なることを知りぬ。我が屬(うから)の勢にては養長(ひた)す可からず。父の在(いま)す所に從(ゆ)く可し。此(ここ)に在(を)るべからず」といひき。時に子哀み泣き、面を拭ひて答へけらく、「謹みて母の命を承はりぬ。敢へて辭むに所(よし)無し。然れども一身(ひとりみ)の獨にして去り、人の共に去るもの無し。望(こ)ひ請(ねが)はくは、矜(あはれ)みて一(ひとり)の小子(わらは)を副へたまへ」といひき。母の曰ひけらく、「我が家に有らゆるは、母と伯父とのみ。是も亦汝が明かに知れる所なり。人の相從ふ可き無かるべし」といひき。爰に子恨を含みて事(もの)吐(い)はず。訣別(わかれ)の時に臨み、怒怨(いかり)に勝(た)へずして、伯父を震ひ殺して天に昇らむと欲(おも)ひき。時に母驚き動(さは)ぎて、瓮を取りて投げしかば、神の子に觸れて昇ることを得ず、因りて此の峰に留まりき。盛る所の瓮甕(みか)は今片岡の村に存(のこ)れり。其の子孫(うみのこ)社を立てて祭を致し、相續ぎて絶えず。 注:「茨城」の読みについて。 ここに出ている『茨城」を次田氏がどう読ませているのか、振り仮名がついていないので不明です。常陸国風土記の茨城は、普通は「うばらき」と読んでいるようですが、『和名類聚抄』(『和名抄』)には「牟波良岐」とあります。 国立国会図書館デジタルコレクション →『和名類聚鈔』20巻[3]。元和3年刊。 17/64 「牟波良岐」をどう読むのか、「むはらき」と読むのでしょうか。 天保10年に出された『常陸国風土記』(『訂正常陸国風土記』・西野宣明校訂。江戸横山町・和泉屋金右衛門出版。水戸御蔵版。)には、「茨城」に「ウバラキ」と振り仮名がつけられています。 国立国会図書館デジタルコレクション →『常陸国風土記』(『訂正常陸国風土記』)・西野宣明校訂。 天保10年刊。9/44 , 15/44 , 他 なお、岩波の日本古典文学大系では、「うばらき」と読ませています。 |