資料58 詩「うめぼし」(「尋常小学読本 巻五」所収)


          
うめぼし            

 

二月・三月花ざかり、
うぐひす鳴いた春の日の
たのしい時もゆめのうち。
五月・六月實がなれば、
枝からふるひおとされて、
きんじよの町へ持出され、
何升何合はかり賣。
もとよりすつぱいこのからだ、
しほにつかつてからくなり、
しそにそまつて赤くなり、
七月・八月あついころ、
三日三ばんの土用ぼし、
思へばつらいことばかり、
それもよのため、人のため。
しわはよつてもわかい氣で、
小さい君らのなかま入、
うんどう會にもついて行く。
ましていくさのその時は、
なくてはならぬこのわたし。
 

 

   (『尋常小學讀本 巻五』所収)



  (注) 1.  詩の本文は、広島大学図書館デジタルアーカイブ所収の『尋常小学読本 巻五』によりました。(『尋常小学読本 巻五』は、大正3年9月8日修正発行、大正3年10月15日翻刻発行。著作兼発行者・文部省。翻刻発行兼印刷者・日本書籍株式会社。) 教科書の表題は、「第十 うめぼし」となっています。

 → 広島大学図書館デジタルアーカイブ
  →『尋常小学読本 巻五』
  → 第五 うめぼし(16page〜17page/45pages)

 なお、海後宗臣・仲新編纂『日本教科書大系』近代編 第七巻 国語
(四)
(講談社、昭和38年11月10日発行)とも照合しましたが、こちらは詩の1行目が「二月・三月花かざり」と誤植になっていました。
   
    2.  詩の作者名は出ていません。     
    3.  朝日新聞2002(平成14)年12月16日の夕刊に掲載された「懐歌詞(なつかし)のうめぼし」という記事によると、この「うめぼし」は「うめぼしのうた」として、詩の一部を変えたり、メロディーがつけられたり、続きができたりしながら、今なお歌い継がれているそうです。 
 なお、同記事の解説には、「教科書研究センター(東京)によると、1910(明治43)年から全国で使われた小学3年向け国語教科書「
尋常小学読本巻五」に載っていた。20(大正9)年に出た同教科書の第2期修正本にも掲載され、東京など1府7県で使われた。(中略)明治末期には音楽の教科書にも掲載されていたが、楽譜はなかった(後略)」とあります。
   
    4.  フリー百科事典『ウィキペディア』に、 「うめぼしのうた」の項目があります。    
           
           





 
                                  
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