(注) | 1. |
「和氏第十三(『韓非子』より)」の本文は、新釈漢文大系11『韓非子
上』(竹内照夫著、明治書院・昭和35年12月25日初版発行、昭和45年10月5日14版発行)によりました。 ただし、返り点・句読点・改行(段落分け)は省略しました。 |
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2. | 「和氏」は、「カシ(歴史的仮名遣いでは「クワシ」)」と読みます。「和」を、漢音で読んでいるからです。 和……呉音・ワ、唐音・オ(ヲ)、漢音・カ(クワ) (『改訂新版 漢字源』 学習研究社、2002年による。) |
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3. | 玉の細工人について、『韓非子
上』の語釈に、「玉人
たまつくり。正字としては、たまは玉、たまつくりは玊であるが、便宜上ともに玉字にしておく」とありますが、ここでは、玉人の場合は「玊人」(キュウジン・(キウジン))と書き直してあることを、お断りしておきます。 参考: 〇玉(漢音:ギョク)……(1)たま。美しい石の総称。「宝玉」(2)ギョク。瑪瑙(めのう)に似た半透明の石。乳白色の軟玉と、鮮緑色の硬玉とがある。(3)美しいもの、すぐれたものを形容する語。「玉楼」(4)天子に関することばに冠する語。「玉座」(5)他人に関することばに冠する語。「玉稿」(6)以下、略。 〇玊(漢音:キュウ(キウ))……(1)きずのある玉。 (2)玉細工をする職人。「玊人」(以上、『旺文社漢和辞典』赤塚忠・阿部吉雄編、1964年初版、1986年改訂新版による。) |
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4. | 底本については、巻頭の「例言」に次のようにあります。 定本は呉氏覆刻乾道本とする。本書中で「原本」とよぶのはこれであって、中華書局の四部備用本を使った。 |
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5. | 本文中に環境依存文字を使用しているため、うまく表示できない場合があると思いますが、ご容赦ください。 | ||||
6. | 『国立国会図書館デジタルコレクション』の中に、『韓非子』の古い注釈書が何冊か収録されていて、それを見る(読む)ことがで
きます。 → 例えば、宮内鹿川著『韓非子講義』(文華堂、明治42年1月15日発行)など。 |
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7. |
〇韓非(かんぴ)=中国、戦国時代の韓の公子。法家の大成者。かつて荀子に師事。申不害(しんふがい)・商鞅(しょうおう)らの刑名の学を喜んだ。しばしば書を以て韓王を諌めたが用いられず、発憤して「韓非子」を著した。のち秦に使して李斯(りし)らに謀られ獄中で毒をおくられ自殺。(──~前233頃) 〇韓非子(かんぴし)=(1)韓非の敬称。 (2)韓非およびその後学の著書。20巻55編。法律・刑罰を以て政治の基礎と説く。 〇和氏(かし)の璧(たま)=「卞和(べんか)」参照。 〇卞和(べんか)=春秋時代の楚の人。荊山で得た、玉を含んだ石を楚の厲王(れいおう)に献じたが、玉ではないとして左足を断たれた。武王のときまたこれを献じ、同じく右足を斬られたが、文王のとき、これを磨かせると果たして玉であったから、名づけて「和氏(かし)の璧(たま)」といった(韓非子和氏)。のち戦国時代に趙の恵王がこの玉を得、秦の昭王が15の城と交換しようとしたので、「連城の璧」とよばれた(史記廉頗伝)。 〇完璧(かんぺき)=[璧は円形の玉(ぎょく)] 欠点がなく、すぐれてよいこと。完全無欠。「─を期する」「─な演技」 (以上、『広辞苑』第6版による。) |
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8. |
「和氏の璧」・「完璧」という言葉に関連して (1) 「和氏の璧」について、新釈漢文大系89『史記九(列伝二)』の注に、次のように紹介されています。( )内の読み仮名は、引用者がつけたものです。 楚人(そひと)の和氏(かし)が玉の原石を見つけ、楚の厲王(れいおう)に献じたが、玉人(ぎょくじん)がただの石だと鑑定したので、和氏は左足を切られた。武王の時代になって再び献じたが、またしても石と鑑定され右足をも切断された。文王の代になって、原石を抱(いだ)いて泣き続ける和氏のことを伝え聞いた文王は、和氏からその訳をきき磨かせると果たして名玉であった。これに名づけて和氏の璧(かしのたま・かしのへき)といった。以上は、『韓非子』和氏篇に見える。(247頁) (2) 『史記』廉頗藺相如列伝の本文にある「相如曰王必無人臣願奉璧往使城入趙而璧留秦城不入臣請完璧歸趙」(相如曰はく、「王必ず人無くんば、臣願はくは璧(たま)を奉じて往きて使ひし、城(しろ)趙に入(い)らば璧をば秦に留めん。城入(い)らずんば、臣請ふ、璧(たま)を完(まつた)うして趙に歸らん」と。)ということから、「完璧」という言葉が生まれました。 「完璧」を訓読すれば、「璧を完(まっと)うす(完レ璧)」となって、「璧(たま) を無傷で無事に取り戻す」という意味ですから、語源から言えば、辞書に「瑕(きず)のない璧(たま)(宝玉)の意から」「きずのない宝玉の意から」などと説明してあるのは、厳密には正しいとは言えないのではないかと思われます。 (3) 〇璧(漢音・ヘキ、呉音・ヒャク)= (1)たま。平らな輪の形をした玉で、中央に穴があり、穴の直径が輪の幅と同じか小さいもの。祭り・儀式に用い、また爵位の 象徴としても使う。(2)美しい玉。また、美しいもの、りっぱなもののたとえ。「双璧(ソウヘキ)」 [引用者注: 挿絵は省略しました。](『改訂新版 漢字源』学習研究社、2002年による。) 〇璧(漢音・ヘキ)=(1)たま。環状の平たい玉で、肉の幅が中の穴の直径の二倍あるもの。(2)玉の通称。(3)たまのように美しくりっぱなもの。「双璧」 [引用者注: 挿絵は省略しました。](『旺文社漢和辞典』赤塚忠・阿部吉雄編、1964年初版、1986年改訂新版による。) |