音もなくかもなく常に天地は書かざる經をくりかへしつゝ (巻之一
1)
かりの身を元のあるじに貸渡し民安かれと願ふ此身ぞ (同
10)
見渡せば遠き近きはなかりけりおのれおのれが住處(すみか)にぞある (同
26)
ちうちうとなげき苦むこゑきけば鼠の地獄猫の極樂 (巻之二
41)
おのが子を惠む心を法(のり)とせば學ずとても道に到らん (同
42)
聲(おと)もなく香もなく常に天地は書かざる經を繰返しつゝ (同
44)
笛をふき太鼓たゝきて舞へばこそ不肖の我も跡あしとなれ (同
55)
古道につもる木の葉をかきわけて天照す神の足跡を見ん (同
63)
古道に積る木の葉をか搔分けて天照す神のあし跡を見む (同
64)
咲けばちりちれば又さく年毎に詠(なが)め盡せぬ花のいろいろ (同
70)
茶柄杓(ちやびしやく)の樣に心を定めなば湯水の中も苦(くるし)みはなし (同
75)
むかしより人の捨(すて)ざるなき物を拾ひ集めて民に與へん (巻之三
91)
むかしより人の捨ざる無き物を拾集めて民にあたへん (同
92)
見渡せば遠き近きは無かりけり己々(おのれおのれ)が住處にぞある (同
114)
咲(さけ)ばちりちれば又さき年毎に詠(なが)め盡せぬ花の色々 (同
116)
増減(ぞうげん)は器傾く水と見よこちらに増せばあちらへるなり (同
同)
喰へばへり減れば又喰ひいそがしや永き保ちのあらぬ此身ぞ (同
同)
腹くちく喰ふてつきひく女子等は佛にまさる悟(さとり)なりけり (同
同)
我といふ其大元を尋れば食ふと着るとの二つなりけり (同
同)
増減は器傾く水と見よ (同
117)
天つ日の惠積置無(めぐみつみおく)盡藏鍬でほり出せ鎌でかりとれ (同
同)
諸共に無事をぞ祈る年毎に種かす里の賤女(しづめ)賤の男(を) (同
118)
無といへば無しとや人の思ふらんよべば答ふる山彦の聲 (同
121)
秋來れば山田の稻を猪(しゝ)と猿人と夜晝爭ひにけり (同
122)
飯と汁木綿着物は身を助く其餘は我をせむるのみなり (同
125)
飯と汁木綿着物 (同
126)
飯と汁木綿着物は身を助く其餘は我をせむるのみなり (同
132)
春は花秋は紅葉と夢うつゝ寢ても醒ても有明の月 (巻之四
148)
世の中は草木もともに神にこそ死して命のありかをぞしれ (同
152)
世の中は草木もともに生如來死して命の有かをぞしれ (同
同)
むかし蒔く木の實大木と成にけり今蒔く木の實後の大木ぞ (同
163)
ぶんぶんと障子にあぶの飛(とぶ)みれば明るき方へ迷ふなりけり (同
166)
奧山は冬氣に閉ぢて雪ふれどほころびにけり前の川柳 (同
168)
きのふより知らぬあしたのなつかしや元の父母ましませばこそ (同
180)
丹精は誰(たれ)しらねどもおのづから秋の實法(みのり)のまさる數々
(巻之五 202)
飯と汁木綿着物は身を助く (同
206)
世の中は捨足代木(すてあじろぎ)の丈くらべそれこれともに長し短し (同
231)
米蒔けば米の草はへ米の花咲つゝ米の實のる世の中 (同
232)
古道につもる木の葉をかきわけて天照す神の足跡を見ん (續篇
26)
増減は器傾く水と見よあちらにませばこちらへるなり (同
30)
見渡せば遠き近きは無かりけり己々が住處にぞよる (同
38)
見渡せば生死生滅無かりけり (同
同)
見渡せば善きも惡しきもなかりけり (同
同)
見渡せば憎いかはゆい無かりけり (同
同)
穀物の夫食(ふじき)となるも味も香も草より出でゝ艸になるまで (同
42)
百艸の根も葉も枝も花も實も種より出でて種になるまで (同
同)