資料396 杜牧「山行」 



        山行    杜牧

 遠 上 寒 山 石 徑 斜 
 白 雲 生 處 有 人 家  
 停 車 坐 愛 楓 林 晩
 霜 葉 紅 於 二 月 花 




 遠く寒山に上(のぼ)れば石径(せきけい)斜めなり。
 白雲生ずる処(ところ) 人家有り。
 車を停(とど)めて坐(そぞろ)に愛す楓林(ふうりん)の晩(くれ)
 霜葉(さうえふ)は二月の花よりも紅(くれなゐ)なり。


  (注) 1.  上記の「杜牧の詩「山行」」の本文および訓読は、漢文学習叢書(3)『漢詩』(藤野岩友著、旺文社・昭和32年6月30日初版発行)によりました。
 ただし、第2句は「白雲生ずる処に人家有り」と読んであるのを、ここでは引用者の覚えている形で「白雲生ずる処 人家有り」と読んだことをお断りしておきます。
 また、「石径(石徑)」を「せきけい」と読んでいますが、人によっては「せっけい」と促音にして読むこともあります。      
   
    2.  この詩の出典は、『三体詩』巻一、『全唐詩』巻五百二十四(巻524)などです。    
    3.  藤野氏の『漢詩』の「参考」によれば、
(1)「停車」は山行にはふさわしくないので、「停歩」の誤りとする説がある。
(2)「楓」は、カエデとは異なる植物で、葉が掌状に三裂し、秋に紅葉するオカツラのこと。
(3)この詩を出典として、「紅於」という言葉が紅葉の意に用いられている。
(4)「二月花」は桃の花を言うとの説がある。  (同書、100頁)
        
 * 〇オカツラ(男桂・楓)=フウ(楓)の古名。〈和名抄二〇〉 
   〇フウ(楓)=(カエデとは別種) マンサク科の落葉高木。中国・台湾に自生。高さ約10㍍。秋、紅葉する。春、新葉と共に黄褐緑色の雌雄花を開き、とげのある球形の果実を結ぶ。街路・公園などに植え、また樹脂を楓香脂(ふうこうし)と呼び、薬用。同属近似種に北米産のモミジバフウがある。イガカエデ。賀茂楓(かもかつら)。古名、かつら・おかつら。 
 (以上、『広辞苑』第6版によりました。なお、『広辞苑』には、フウの挿絵が載っています。)  
 なお、この詩の「車」とは、人力でかつぐ輿(こし)のことで、山駕籠のようなものだそうです。

 ※ フウ(楓)は、「別名、サンカクバフウ(三角葉楓)、タイワンフウ(台湾楓)、イガカエデ(伊賀楓)、カモカエデ(賀茂楓)。古名、オカツラ(男桂)」と、フリー百科事典『ウィキペディア』「フウ」の項にあります。
   
    4.  〇杜牧(とぼく) =晩唐の詩人。字は牧之。号は樊川(はんせん)。京兆万年(陝西西安)の人。剛直で気節があり、詩は豪放、また艶麗で洒脱。杜甫に対して小杜と呼ばれる。書画にも秀で、兵法をよくし孫子の注釈がある。詩文集「樊川文集」。(803-853)          
 * 引用者注:  杜牧の没年を、852年とする本もあります。
 〇三体詩(さんたいし)=(サンテイシとも)「唐賢三体詩家法」の略称。 →三体唐詩。
 〇三体唐詩(さんたいとうし)=唐詩の中から七言絶句・七言律・五言律の三体を選んで編纂した書。詩人167人の作を収録。6巻。宋の周弼(しゅうひつ)編。1250年成る。原題は「唐賢三体詩家法」。三体詩。
 〇全唐詩(ぜんとうし)=唐代の詩を網羅的に集めた勅撰詩集。900巻。清の康煕帝の命により、彭定求らが撰。1706年完成。作者2200人余、詩数4万 8900首余。  (以上、『広辞苑』第6版による。)
   
    5. フリー百科事典『ウィキペディア』「杜牧」の項があります。    
    6.  『詩詞世界』(碇豐長の詩詞)というサイトに、この詩の解説があります。
 『詩詞世界』(碇豐長の詩詞)→ 杜牧「山行」
   


 

 




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