(注) | 1. | 『葉隠』の文章を理解するためには、その全文を読む必要があると思われますが、ここにはかの有名な「武士道と云ふことは、即ち死ぬことと見付けたり」の前後の部分だけを取り上げました。 | |||
2. |
上に引いた『葉隠』本文についての注。 甲について。 (1)甲の本文は、岩波書店の日本思想大系26『三河物語 葉隠』(1974年6月25日第1刷発行)によりました。『葉隠』の校注者は、佐藤正英・相良亨の両氏です。 (2)凡例によれば、底本は、国立国会図書館蔵餅木鍋島家本だそうです。 (3)上記の引用部分の原文には、振り仮名はついていません。現代仮名遣いによる振り仮名は、校注者によるものです。 なお、「多分すきの方(かた)に理が付(つく)べし」の「方」には、「かた」と読み仮名がついていますが、「我人(われひと)、生(いく)る方がすき也」の「方」には読み仮名がついていません。これは、こちらの「方」は「ほう」と読んだからでしょうか。 因みに三島由紀夫著・笠原伸夫訳『葉隠入門』には、「早く死ぬほうに片付(かたづ)くばかりなり」となっています。(光文社カッパブックス『葉隠入門』178頁) (4)平仮名の「く」を縦に伸ばした形の繰り返し符号は、普通の仮名に直してあります。(二つ二つ) (5)常用漢字を、引用者が旧漢字に直しました。 (6)日本思想大系本の原文には、「武士たる者は、」「武士道と云(いう)は」の前に、それぞれ「一、」がついていますが、ここではそれを省略しました。 (7)巻頭の口絵として、写本のこの部分が出ていますので、ご覧ください。 ただし、「……此境危き也。圖に」までしか出ていません。 乙について。 (1)乙の本文は、『国立国会図書館デジタルコレクション』所収の『葉隠』(山本常朝述・田代陳基記・中村郁一編、東京:丁酉社、明治39年3月23日発行)によりました。本文は、13左~14右 /107 に出ています。 |
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3. |
日本思想大系26『三河物語 葉隠』巻末の解説「『葉隠』の世界」(筆者・相良亨氏)によると、「『葉隠』は、山本常朝(万治2年-享保6年、1659-1721)がかたった言葉を7年間にわたって田代陣基(延宝6年-延享5年、1678-1748)が筆録したものといわれる。常朝は少年時代から鍋嶋家第二代の藩主光茂の側近に仕え、42歳の時、光茂の死にあい、その機会に剃髪した。常朝が陣基にかたりはじめた宝永7年(1710)は剃髪してから10年後のことである。常朝は書物役などを以て光茂に仕えたのであるが、主君光茂からうけた懇情に対しては殉死をねがう思いであった。しかし殉死が当時すでに禁止されていたので、やむなく出家の道をえらんだのである。筆録者の陣基も御祐筆役として三代綱茂に仕えた武士であるが、当時故あって謹慎中であった。」とあります。 なお、この成立事情についても、「どこまで正確なものであるかについては、なお疑問をいれる余地がないわけではない」として、詳しい考察がなされていますので、詳しくは同書657頁以下を参照してください。 ※ 日本思想大系26『三河物語 葉隠』巻末の解説「『葉隠』の世界」に、「山本常朝(万治2年-享保6年、1659-1721)」とあるのは、どういうことでしょうか。普通は、山本常朝の没年は享保4年(1719)となっています。 |
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4. | また、上記の解説の中で相良亨氏は、『葉隠』の中の「武士道と云は、死ぬ事と見付たり」という言葉について、「(この)言葉は、『葉隠』の言葉として余りにも有名であるが、その意味内容あるいは『葉隠』全体において占める位置は中々複雑であり、必ずしも容易に理解しうるものではない」として、考察をしておられます。(661頁以下) | ||||
5. | 『葉隠』の諸本については、佐藤正英氏が、日本思想大系26『三河物語 葉隠』の巻末に「『葉隠』の諸本について」という文章を書いておられます。それによれば、ここに掲げてある国立国会図書館蔵本の餅木鍋島家本は、(1)小山本系(2)鹿島本系(3)孝白本系 のうちの孝白本系に属するものの由です。 | ||||
6. | 〇葉隠(はがくれ)=武士道を論じた書。佐賀藩士山本常朝つねとも(1659-1719)の談話の筆録。11巻。1716年(享保1)頃成る。藩内外の武士の言行の批評を通じて武士の心構えを説く。 葉隠聞書。葉隠集。葉隠論語。鍋島論語。 (『広辞苑』第6版による) | ||||
7. | フリー百科事典『ウィキペディア』に、「山本常朝」の項があります。 | ||||
8. | 『佐賀大学附属図書館貴重書デジタルアーカイブ』で、小城鍋島文庫(おぎなべしまぶんこ)の「葉隠」(写本)を画像で見ることができます。(この写本は、注4の諸本の分類によれば、(2)鹿島本系に属するものの由です。) 「葉隠の解説」もあります。 |
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9. |
光文社から昭和42年(1967)9月にカッパブックスの1冊として発行された三島由紀夫著『葉隠入門』が、現在は新潮文庫(1983年4月27日初版発行)として出ています。 カッパブックスの『葉隠入門』の内扉裏には、「この本に引用した原文は、岩波版『葉隠』(和辻哲郎・古川哲史校訂)と、『校註葉隠』(栗原荒野編著、内外書房刊)、『いてふ本・葉隠』(三教書院刊)の3冊を参考にさせていただいた。なお、訳者・笠原伸夫氏は、三島由紀夫氏とともに、「批評」の同人。」と記してあります。 この中に、「岩波版『葉隠』(和辻哲郎・古川哲史校訂)」とあるのは、岩波文庫の『葉隠』(上:昭和15年(1940)4月1日発行、中:昭和16年(1941)4月15日発行、下:昭和16年(1941)9月20日発行)を指しています。 |
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10. | 『松岡正剛の千夜千冊』に、823夜「山本常朝『葉隠』」があり、参考になります。 (「松岡正剛 千夜千冊・全読譜」があります。) |