(注) | 1. |
上記の「渡辺崋山「遺書」」の本文は、日本思想大系55『渡邊崋山 高野長英 佐久間象山 横井小楠
橋本左内』(岩波書店、1971年6月25日第1刷発行)によりました。 ただし、漢字を旧漢字に改め、句読点・振り仮名・返り点を省略しました。 |
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2. |
日本思想大系本の巻頭の凡例には、底本について次のようにあります。 椿椿山宛……自筆。崋山会館蔵。 助右衛門宛……岩瀬文庫蔵「全楽堂記伝」。 金子宛……同右 定平宛……同右 渡辺立宛……自筆。「錦心図譜」に拠る。 なお、「崋山遺書のうち、助右衛門・金子・定平宛三通の底本の仮名は片仮名を用いているが、便宜上、平仮名に改めた」とありますので、助右衛門・金子・定平宛の三通については、ここでは底本通り片仮名に直して掲載したことをお断わりしておきます。 |
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3. | 凡例に、「仮名の濁音符号は校注者が施した」とありますので、「渡辺崋山「遺書」」の本文に於てもそうであると考えられます。なお、渡邊崋山の校注者は佐藤昌介氏です。(日本思想大系本には、頭注がついています。) | ||||
4. | 注を少し引かせていただきます。 〇椿山老兄あて 半香義会……半香は、崋山の画の門人福田半香のこと。天保11年9月に崋山の幽居を訪れた半香は、崋山の生活が想像以上に窮していることを知り、江戸に戻ってから、その窮状を救うため画会を催し、崋山の画を売った。半香義会とはそのことを指す。 祖母……底本のまま。老母栄のこと。 ゝ ……崋山の別号「主一」の「主」の点をとったもので、崋山の隠号。「ゝ一」とも記した。 〇助右衛門様あて 茂兵衛……崋山の妹もとの夫で、桐生の商人岩本茂兵衛。 喜太郎……茂兵衛の子。 〇金子樣あて あくぞうもくぞう……あれこれと悪口をいう。 金子……金子武四郎。崋山の門人で、当時水戸藩士。 〇渡辺立どのあて 御祖母樣……崋山の母。70歳。 其方母……崋山の妻、たか。35歳。 立……長男。10歳。 姉弟……姉かつ、16歳。弟諧(かなう)、7歳。 |
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5. |
崋山の遺書について、日本思想大系本の頭注に、次のような解説があります。 崋山が処罰された結果、かれが天保三年年寄役末席に就任して以来手掛けてきた藩政改革は中止され、藩の実権は守旧派の手に帰した。しかしかれは在所蟄居後もなお藩政の前途を案じ、真木定前らの藩内の同志とひそかに気脈を通じていた。このことが藩首脳部を刺激した。たまたま門人福田半香が崋山の窮状を救うために江戸で画会を開き、崋山の画を頒布した。これを知った藩首脳部は、崋山を不謹慎と非難し、このことが幕府の耳に入り近く藩主が問責されるという噂を故意に流した。そのため崋山は、藩主に責任が及ぶことを恐れて、天保十二年一〇月十一日自刃した。ここに挙げた遺書は、いずれもその前日にかかれたものである。 |
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6. | 〇渡辺崋山(わたなべ・かざん)=幕末の文人画家・洋学者。名は定静。通称、登。別号、全楽堂。三河田原藩の家老。儒学を佐藤一斎に学び、蘭学にも通じた。谷文晁の門下に学び、西洋画法を取り入れて独自の様式を完成。鋭い筆致で写実的な肖像画に優れた作品を遺す。高野長英・小関三英らと尚歯会を結成。幕府の攘夷策を責めた「慎機論」を著し、蛮社の獄に連座、郷国に蟄居中に自刃。作「鷹見泉石像」「千山万水図」など。(1793~1841) (『広辞苑』第6版による) | ||||
7. | 立川昭二著『生きて死ぬことのヒント』(小学館文庫、1999年7月1日初版第1刷発行)の「渡辺崋山」の中で、著者の立川昭二氏は、「渡辺崋山といえば、幕末の憂国の志士として、また近世有数の画家として知られている。しかし、その一生はといえば、生まれて死ぬまで困窮の連続であった。」「絵を描いたのも、家族を養う糧(かて)のためであった」と書いておられます。崋山が自刃に追いやられたのも、弟子の半香が師の困窮を救おうとして催した絵の販売会がもとだったわけですから、「崋山が自死したのは主家を思う崋山の意志であった」としても、「その背後には崋山に終生つきまとった「窮迫」があった」ということになるわけです。しかし、「崋山は、生涯これほど困窮していたが、崋山その人は少しも貧乏臭くなく、性格はどこまでも明るく、のびやかであった。崋山の絵は、生活の糧として描かれたものであったが、その作品には、生活の匂いは一かけらも見えない。どの作品も、崋山の性格そのままにどこまでも誠実で、また凛(りん)とした気韻と風趣にみちていた」といいます。(詳しくは、同文庫82~89頁を参照してください。) | ||||
8. | 『公益財団法人 崋山会』(愛知県田原市)のサイトがあり、そこで「崋山会報」をPDFで見ることができます。「崋山会報」の創刊号(平成10年10月11日)には、加藤寛二氏による「渡辺崋山・略伝」が掲載されています(4~7頁)。 |