(注) | 1. |
上記の「雪山童子」(せっせんどうじ)の本文は、新日本古典文学大系31『三宝絵 注好選』(岩波書店、1997年9月22日第1刷発行)によりました。 「雪山童子」は、「三宝絵 上」の第十条。 |
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2. | 新日本古典文学大系本の脚注(馬淵和夫・小泉弘 校注)に、「羅刹の唱える雪山偈の前半の二句を聞き、残りの半偈を聞こうとして、わが身を羅刹に与えようとした雪山童子の、施身聞偈の堅固な道心の話。法隆寺玉虫厨子台座の本生図の題材となっていることは著名。大般涅槃経・聖行品に依拠するが、経に見えない記事が多く、作者が利用したと推定される資料は未詳」とあります。 | |||||
3. |
新大系本には、漢字に振り仮名が多く振ってありますが、ここでは新大系本が拠った底本にある振り仮名のみを残して、他を省略しました。振り仮名は、丸括弧( )に入れて示しました。 振り仮名がないと、かなり読みづらいので、読みの注を注7に記しておきます。 |
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4. | 新大系本の拠った底本は、東京国立博物館蔵、東寺観智院旧蔵本(東寺観智院本)の由です。 | |||||
5. | 平仮名の「こ」を縦に押し潰した形の繰り返し符号は、普通の漢字に改めました。(「生滅滅已」「善哉善哉」) | |||||
6. | 「雪山(せっせん)」とは、インド北部に聳えるヒマラヤ山脈のことだそうです。 なお、新大系本には脚注が付いていますので、詳しくはそちらを参照してください。 |
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7. | 新大系本の読み(ルビ)による注。 雪山童子(せっせんどうじ) 独ノ人(ひとりのひと) 菓ノ子(このみ) 魚ノ子(うおのこ) 菴羅(あむら) 菓子(このみ) 稀ナリ(まれらなり) 心ヲ発ス物(こころをおこすもの) 月キ波ニ随テ(つき、なみにしたがいて) 不伊坐ザリ(いまさざり) 大乗経(だいじょうぎょう) 風ノカニ(ほのかに) 頭ノ髪(かしらのかみ) 口歯(くちのは) 奇ブ(あやしぶ) 小コ牛(こうし) 母の音(ははのこえ) 辞バ(ことば) 説ヽヽヽバナリ(ときたま えることばなり=東大寺切「仏のときたまへることばなり」による 異ト人ト(ことひと) 願ハ(ねがわくは) 説キ畢テヨ(ときはてよ) 被迫レ(せめられ) 人迫テ(ひとせめて) 肉ヲ啗ヒ(ししをくらい) 血ヲ呑ム(ちをのまむ) 未死ネバ(いまだしなねば) 其ノ肉シ(そのしし) 未寒ネバ(いまだひえねば) 鬼ニ咲ヒテ(おに、わらいて) 実トヽハ可馮キ(まこととはたのむべき) 今日フ(けふ=きょう) 法(のり) 土ノ器(つちのうつわもの) 宝ノ器ノ(たからのうつわもの) 身ニ着タル鹿ノ皮ノ衣モ(みにつけたるししのかわのころも) 手ヲ叉ザヘ(てをあざえ) 地ニ跪マヅキテ (つちにひざまずきて) 数タ度ビ(あまたたび) 心ニ染ム(こころにしむ) 石ノ上ヘ(いしのうえ) 文(ふみ) 不至ヌ(いたらぬ) 居へて(すえて) 渡シ済ヘ(わたしすくえ) 天人来テ(てんにんきたりて) 善哉々々(ぜんざい、ぜんざい) 生死ノ罪(しょうじのつみ) 見タリ(みえたり) |
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8. | 三宝絵(さんぼうえ)には、(1)仏・法・僧の三宝に関する絵画。(2)仏教説話集の名。三宝絵詞ともいう。──の二つの意味があります。 〇三宝絵(さんぼうえ)=仏教説話集。源為憲著。3巻。984年(永観2)撰し、冷泉天皇皇女尊子内親王に奉った。上巻は釈尊等の本生(ほんじょう)説話、中巻は日本の僧俗の事歴、下巻は月次法会の来歴。元来絵を伴っていたが、現在は絵は伝わらず詞(ことば)のみ。三宝絵詞。 (『広辞苑』第6版による。) 〇三宝絵詞(さんぼうえことば)=説話集。三巻。源為憲編。984年成立。冷泉天皇第二皇女尊子内親王のために撰進。説話を物語的に構成し、仏教を平易に解説する。絵は散逸。三宝絵。 (『大辞林』第2版による。) |
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9. |
新日本古典文学大系本の巻末の解説で、馬淵和夫氏は、「『三宝絵』は絵巻物の名称、『三宝絵詞』はその詞書だけを書き出して、読み物としたものの名称である。これを現代では「さんぼうえことば」と読んでいるが、平安時代には「さんぼうゑのことば」もしくは「さんぼうのゑのことば」と「の」を入れて読んだものかと思われる」と書いておられます。 書名を「三宝絵」としたことについては、「本書の底本とした東京国立博物館本(いわゆる東寺観智院本)は、上・中・下各冊の表紙外題には「三宝絵詞」と書くが、内題・尾題はいずれも「三宝絵」とし(ただし、下巻の内題のみ「三宝絵詞」)、名古屋市博物館本(いわゆる関戸本)、前田尊経閣本もすべて「三宝絵」としているので」としておられます。 また、「「三宝」は「さむぼう」か「さむぽう」かは決定しがたい」としておられます。(以上、詳しくは、同書「解説」を参照してください。) |
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10. | 資料210「国民学校国語教科書『初等科国語 八』(本文)の中に、「修行者と羅刹」という題で、この雪山童子の話が出ています。これは、国民学校6年生後期用の教科書です。 | |||||
11. | 『msn エンカルタ百科事典ダイジェスト』に、曽我蕭白「雪山童子図」が出ていましたが、現在は見られないようです。(2010年2月15日) | |||||
12. | 『三重県教育委員会』のホームページの文化財のページに、三重県指定有形文化財(絵画)の「紙本著色曽我蕭白筆「雪山童子の図」があり、〈しほんちゃくしょくそがしょうはくひつ「せつさんどうじのず」〉と読みが記してあります。 この「せつさんどうじ」の読みについては、当時(記入者注:文化財指定当時)の聴き取りによるものであろうということでした。(2012年6月16日付記) 「雪山童子の図」の絵が「No Image」になっているのが残念です。 |
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13. | 以前、『松阪市』のホームページの中の「文化財」のページに、曽我蕭白筆の「雪山童子図」が出ていて、ここでも「せつさんどうじのず」と読んでいました。その「せつさんどうじのず」の
読みは、県文化財の読みに拠ったもの、ということでしたが、今ホームページを見てみると、「せつせんどうじのず」となっていました。普通の読み方に変えたようです。(2023年8月11日) 松阪市のホームページ → 紙本著色曽我蕭白筆 雪山童子の図(せつせんどうじのず) |
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14. |
曽我蕭白筆「雪山童子図」を所蔵している継松寺に嘗て伺ったところでは、同寺では「雪山童子」を
「せつさんどうじ」と読み伝えていたそうです。ただし、現在の「岡寺山継松寺」のホームページには、「せっせんどうじ」となっています。この読みは、中村元著『仏教語大辞典』の読みに従ったものだそうです。(2012年6月16日付記) 「岡寺山継松寺」のホームページ → 文化財紹介(継松寺の宝物) 「県指定文化財(非公開)」曽我蕭白筆 雪山童子図(せっせんどうじず) |
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15. | 資料226に、雪山偈(『大般涅槃経巻第十三 聖行品之下』より)があります。 |