資料126 白居易「琵琶行」




 

   琵琶行      白 居 易

元和十年秋予左遷九江郡司馬明年秋送客湓浦口聞舟中夜彈琵琶者聽其音錚錚然有京都聲問其人本長安倡女嘗學琵琶於穆曹二善才年長色衰委身爲賈人婦遂命酒使快彈數曲曲罷憫然自敍少小時歡樂事今漂淪憔悴轉徙於江湖閒予出官二年恬然自安感斯人言是夕始覺有遷謫意因爲長句歌以贈之凡六百一十六言命曰琵琶行 

 

 


潯陽江頭夜送客 楓葉荻花秋瑟瑟 主人下馬客在船
擧酒欲飲無管絃 醉不成歡慘將別 別時茫茫江浸月
忽聞水上琵琶聲 主人忘歸客不發 尋聲暗問彈者誰
琵琶聲停欲語遲 移船相近邀相見 添酒囘燈重開宴
千呼萬喚始出來 猶抱琵琶半遮面 轉軸撥絃三兩聲
未成曲調先有情 絃絃掩抑聲聲思 似訴平生不得志
低眉信手續續彈 説盡心中無限事 輕攏慢撚撥復挑
初爲霓裳後六幺 大絃嘈嘈如急雨 小絃切切如私語
嘈嘈切切錯雜彈 大珠小珠落玉盤 閒關鶯語花底滑
幽咽泉流水下灘 水泉冷澁絃凝絶 凝絶不通聲暫歇
別有幽愁暗恨生 此時無聲勝有聲 銀瓶乍破水漿逬
鐵騎突出刀鎗鳴 曲終抽撥當心畫 四絃一聲如裂帛
東船西舫悄無言 唯見江心秋月白 沈吟收撥插絃中
整頓衣裳起斂容 自言本是京城女 家在蝦蟇陵下住
十三學得琵琶成 名屬敎坊第一部 曲罷常敎善才服
妝成毎被秋娘妬 五陵年少爭纏頭 一曲紅綃不知數
鈿頭銀箆撃節碎 血色羅裙翻酒汚 今年歡笑復明年
秋月春風等閒度 弟走從軍阿姨死 暮去朝來顔色故
門前冷落鞍馬稀 老大嫁作商人婦 商人重利輕別離
前月浮粱買茶去 去來江口守空船 遶船明月江水寒
夜深忽夢少年事 夢啼粧涙紅闌干 我聞琵琶已歎息
又聞此語重喞喞 同是天涯淪落人 相逢何必曾相識
我從去年辭帝京 謫居臥病潯陽城 潯陽地僻無音樂
終歳不聞絲竹聲 住近
湓江地低濕 黄蘆苦竹遶宅生
其閒旦暮聞何物 杜鵑啼血猿哀鳴 春江花朝秋月夜
往往取酒還獨傾 豈無山歌與村笛 嘔啞啁哳難爲聽
今夜聞君琵琶語 如聽仙樂耳暫明 莫辭更坐彈一曲
爲君翻作琵琶行 感我此言良久立 卻坐促絃絃轉急
凄凄不似向前聲 滿座聞之皆掩泣 就中泣下誰最多
江州司馬靑衫濕

 

 

 

 




     (注)  1.詩の本文は、新釈漢文大系10『古文真宝(前集)下』(星川清孝著、明治
        書院・昭和42年2月25日初版発行、昭和47年3月15日11版発行)によりま
        した。ただし、詩の本文に施してある返り点・句読点や改行(段落分け)は
        省略しました。
       2.後から11句め「
嘔啞啁哳難爲聽の「」は、音は「タツ」です。
       3.白楽天の自序にある通り、総字数616字の詩です(七言88句)。
       4.初めから28句目「幽咽泉流水下灘」と29句目「水泉冷澁絃凝絶」につい
        ては、ここで底本とした新釈漢文大系10『古文真宝(前集)下』の「琵琶行」
        の語釈と余説に、著者星川清孝氏の注と解説があります。氏は、「幽咽泉
        流氷下灘」「氷泉冷澁絃凝絶」とある本文がよいであろう、としておられます。
        (同書672頁の「語釈」と679~682頁の「余説」参照)
        5.『白氏長慶集』巻十二には「琵琶引并序」と題して載せてある由です。 ただ
          し、その序には「命曰琵琶行」とあるので、「行」と「引」とは、その実体には相
        違がないのであろう、ということです。
        6.琵琶行(びわこう)=唐の白楽天の歌行体の詩。七言古詩で88句から成り、
           江州司馬に左遷された翌816年の秋の作。もと長安の名妓であった女が
           舟中で琵琶をひき身の上を語るのに同情し、左遷の悲しみを託したもの。
           「長恨歌」と併称。 
(『広辞苑』第6版による。)
 

 

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